映画『パルプ・フィクション』のあらすじネタバレ解説|これを読めば更に映画が楽しめる小ネタも紹介
クエンティン・タランティーノ監督といえば、バイオレンスと独特の映像表現、過去の映画や日本のアニメのオマージュを散りばめた遊び心など、エンターテイメント性を前面に出した作風がお馴染みですよね!
今回ご紹介する『パルプ・フィクション』はまさにその元祖とも言える作品で、制作費は8万ドルと低予算ながらも、映画関係者やファンに高い支持を得て2億ドルもの興行収益を叩き出した、タランティーノ節がこれでもかと炸裂しているエンタメ作品です。
この遊び心満載の作品は、20世紀前半にアメリカに存在した安っぽい大衆向け雑誌『パルプ・マガジン』から着想を得たとのこと。あえて粗雑で雑多な要素を折り込み、ジャンク感を演出する事で大衆娯楽として昇華させる発想は、さすが映画界のエポックメーカー、奇才・タランティーノ監督と言った所でしょうか!!
三つの物語がそれぞれ独立した時間軸で進行する独特の手法は、以後の映画界にも大きな影響を与えてストーリー展開の定石を覆しました。作風の似た映画が『パルプ・フィクション的』と表現されてジャンル化してしまった程です。
そんな個人の監督ではなく映画ジャンルの1つのカテゴリーとまで評されるクエンティン・タランティーノ監督の原点『パルプ・フィクション』の魅力を存分に感じてみませんか?
目次
映画界の奇才・クエンティン・タランティーノ監督について
出典:Amazon
奇抜なカット、展開に、ふんだんに散りばめられたパロディやオマージュは膨大な映像作品の知識の量が成せる技。そんな奇才タランティーノ監督には一体どのようなバックボーンがあったのでしょうか?
アメリカ・テネシー州出身の58歳。複雑な家庭の事情から実父には一度も会った事がないものの、母の影響もあり幼少の頃より映画と共に育った事が、映画監督を志した原体験のようですね。
1971年、なんと若干14歳の頃に最初の脚本を書いたというとんでもない才を発揮しています。
16歳の頃、通っていた高校を中退し、ジェームス・ベストという劇団に加わって演技を学ぶ事になります。その時の経験が、後の監督、脚本、俳優業においての基礎になったのだとか。
本格的にハリウッドで映画の脚本の仕事をするようになったのは、1987年頃からで、『My Best Friend’s Birthday』という作品の脚本を手掛けました。この時の脚本は後にトニー・スコット監督の『トゥルー・ロマンス』の元ネタとして注目される事となります。
その後、ハリウッド初の監督・脚本を担当した作品『レザボア・ドッグス』を発表。この作品がカンヌ国際映画祭にも出品されてスマッシュヒットし、クエンティン・タランティーノ監督の名前が認知されるようになりました。
そしてハリウッドでの監督第2作目、本記事でご紹介する『パルプフィクション』が1994年に発表され、世界中で大ヒットを記録!一気にその名前が世に広まりました。
また、日本のアニメ作品やアジアの映画にも精通するタランティーノ監督は、『攻殻機動隊』や『BLOOD THE LAST VAMPIRE』にも影響を受けているそうです。映画『キル・ビル』を制作している時には、わざわざ日本のアニメ制作会社にアニメパートの制作を依頼しに訪れたそうです。日本アニメ業界へのリスペクトが強いですよね!
徹底してCGを避けるアナログ主義としても有名で、自身の監督する作品においてはできる限りCGを使用しないのがポリシーなんだとか。しかし、他の監督の作品に使われる事は全然OKだし楽しめるとの事。主義を押し付けたり、他の作品の価値観を壊すような言動は取らない、心配りのできる優しい人柄だと言われています。
鬼才・クエンティン・タランティーノ監督のおすすめ映画9選!『キル・ビル』他10秒で分かる!映画『パルプフィクション』の簡単なあらすじ
レストランで不良カップルが強盗について話をしながら朝食を取っていた。話し合いの末、カップルは次に襲う店を最後に強盗稼業から足を洗うと決め、たった今食事をしているレストランを襲う事になり、銃を店内の客に向け脅しをかける。
場面が変わり、ギャングのヴィンセントとジュールスは裏切者の青年グループから奪い返したアタッシュケースをボスに受け渡す。そこでギャングのボスに一晩だけ妻の世話をするように頼まれたヴィンセントは渋々仕事を受け、マーセルスの妻・ミアと共にレストランへ出かけるのだった。
落ち目のボクサー・ブッチは、ギャングのボス・マーセルスに八百長試合を持ちかけられる。金に目が眩んだブッチは引き受けるも、試合当日には裏切って対戦相手に勝利してしまう。
それぞれの視点で語られる三つの物語が交錯するがーー。
映画『パルプ・フィクション』のネタバレあらすじ
出典:Amazon
ここからは3つの物語の軸が複雑に交錯するストーリーの流れを、あらすじ毎に場面分けしてネタバレとポイント解説をしていきます。複雑なように思えますが、簡単な要点を押さえておけばどなたでも楽しんで観れる内容ですよ!
【あらすじ①】強盗計画(不良カップルの物語)
とあるレストラン。不良カップル・パンプキン、ハニーバニーが強盗計画の話をしながら朝食と取っている。強盗を生業にしているカップルであったが、話し合いの末、次の強盗を最後に足を洗うという結論を出す。
最後の仕事のターゲットを決めかねていると、今食事をしているこのレストランを襲うという流れに。
意を決した2人は銃を取り出して構え、店内にいる客を脅すのだった。
あらすじ①の見所を解説!
3つの物語の内の1つ、不良カップルによる視点で冒頭の物語が進行していきます。いきなり強盗計画をしているシーンから始まるというのも奇抜ですね!一見ストーリーとして独立しているように見えますが、後に別の物語と交錯していきます。
【あらすじ②】ヴィンセント・ベガとマーセルス・ウォレスの妻(ギャングの物語)
直属の青年グループに裏切られ、盗まれたアタッシュケースをギャングのボス・マーセルスに届けたヴィンセントとジュールス。その際、マーセルスに一晩だけ妻・ミアの世話を頼まれるヴィンセント。以前、妻の足をマッサージされた事に嫉妬し逆上して世話係を殺害した、と噂されるマーセルスを恐れながらも、仕事を受ける事に。
レストランへ食事に出かけるヴィンセントとミア。美味しい食事と会話、店内で開催されたダンスコンテストに参加して優勝する等、ヴィンセントと夜をエンジョイし、ミアは楽しい一時を過ごせて上機嫌で帰宅する。
しかしミアはそのテンションのまま薬物を過剰摂取し、意識を失ってしまう。泡を吹いて倒れたミアを見て焦ったヴィンセントは、知り合いの麻薬の売人の家へ連れて行き応急処置でアドレナリンを注射すると、ミアはなんとか意識を取り戻し事なきを得る。
ボス・マーセルスの恐ろしい噂を聞いていたヴィンセントは、今晩の出来事を内緒にしておいてくれとミアにお願いするのだった。
あらすじ②の見所を解説!
ここではギャングである主人公・ヴィンセントの視点で物語が展開します。ミアの色っぽさに一瞬手を出そうと魔が差しかけるヴィンセント、ヴィンセントを演じるジョン・トラボルタの出世作『サタデー・ナイト・フィーバー』のダンスパロディを入れてくるなど、コミカルでテンポの良いシーンが続きます。ユマ・サーマン演じるミアの天真爛漫っぷりにも注目ですね!
【あらすじ③】金時計(ボクサー・ブッチの物語)
全盛期を過ぎ、落ち目になったボクサー・ブッチは、ギャングのボス・マーセルスからわざと負ける八百長試合の依頼を受ける。提示された金額に目が眩んで引き受けるブッチだったが、いざ試合当日になると約束を破って試合に勝利してしまう。多額の賞金と名誉を手にしたブッチではあったが、身の危険を感じて誰にも知られていない住処に恋人と共に身を隠す事に。
翌日、ブッチは父の形見である金時計が無い事に気が付く。そこで前のアパートに戻ってみると、部屋に金時計があり、ホっと胸を撫でおろす。しかし、誰も居ないはずの部屋からトイレを流す音がしてくる。そこにはブッチの様子を見に来たヴィンセントの姿が。
自分を殺すためにマーセルスが差し向けた刺客だと思ったブッチは、部屋に合ったマシンガンでヴィンセントを撃ち殺してしまう。部屋を出て急いで車で逃げる途中、道でギャングのボス・マーセルスに遭遇。焦ったブッチはそのままマーセルスを轢いてしまう。
マーセルスの命に別条がない事を確認し、近くの店へ逃げ込むブッチ。店内まで追ってきたマーセルスと揉み合っていると、店主が格闘する2人に銃を向け、縄で縛ってしまう。
そこへ別の男が駆けつけ、店主と協力してなぜかマーセルスだけを奥の部屋へ連れて行く。
その後、何とか縄を解く事に成功したブッチ。店内にあった日本刀を持ち、奥の部屋に行ってみると、なんと男に犯されているマーセルスの姿が。2人からマーセルスを救出するブッチ。恩を売る事ができたブッチは、マーセルスから条件付きで見逃して貰える事になるのだった。
あらすじ③の見所を解説!
突拍子もなくハチャメチャな展開、とツッコミたくなる所ですが、そんなバカバカしいストーリーを視聴者が楽しめる作品へ落とし込むタランティーノ監督のディレクション力は流石の一言。そして何よりも、この中盤チャプターでもう1人の主人公・ヴィンセントがいきなり死亡してしまうという衝撃の展開。時間軸的には終盤の出来事なのですが、初見では「え?!」となる事受け合いですね!
【あらすじ④】ボニーの一件(ギャングの物語・その2+不良カップルの物語・その2)
チャプター1まで時は戻り、生前のヴィンセントとジュールスの場面に。ギャングのボス・マーセルスのアタッシュケースを取り戻した2人だったが、その際に車に同乗していた人物をヴィンセントが手違いで銃殺してしまう。困った2人は知人のガレージを借り、ボスに連絡。事の顛末を報告すると、死体などの始末を専門に請け負う掃除屋・ウルフをガレージへ派遣してくれる事になり、死体を処理したのだった。
何事も無かったかのように日常に戻ったヴィンセントとジュールスがレストランで食事をしていると、そこに突然強盗が襲撃してくる。強盗で生計を立てている不良カップル・パンプキンとハニー・バニー(チャプター.0)だった。店主と客を脅して金を巻き上げようとする不良カップルの強盗だったが、ジュールスにも銃を突きつけて財布を出せと要求。しかし殺し屋稼業で格闘に手馴れていたジュールスにあっさり銃を奪われ、制圧されてしまう。
静寂に包まれる店内だったが、ジュールスは銃は下ろし、言葉によってパンプキンとハニー・バニーを説得しだす。店内にいる客全員の財布と店の売上げを与えるから、俺の財布は返してこの場を去れと促すのだった。
あらすじ④の見所を解説!
このチャプターでは時間が戻り、ボクサー・ブッチにヴィンセントが殺される前のストーリーを展開しています。また、物語の冒頭に出てきた不良カップルが計画していた最後の強盗シーンにも繋がっていて、物語が一気に交錯する場面ですね。今日でギャングから足を洗うと言っているジュールスの渋い演技も注目ですよ!
映画『パルプ・フィクション』のキャストと登場人物紹介
ヴィンセント・ベガ/ジョン・トラボルタ
『パルプ・フィクション』の主人公。ギャングのボス・マーセルスの手下であり殺し屋。3年間活動していたオランダ・アムステルダムの反社会勢力からマーセルスのギャング組織へ戻ってきた。気が短い半面、マーセルスの凶悪さに怯えるような慎重で臆病な面も。
演じているのは『サタデー・ナイト・フィーバー』などで一世を風靡した俳優、ジョン・トラボルタ。今作中でもオマージュカットでダンスをするなど、セクシーさも健在。
ジュールス・ウィンフィールド/サミュエル・L・ジャクソン
おなじくマーセルスに雇われている手下で旧約聖書の一説を読みながら暗殺する個性的な殺し屋。ヴィンセントとは相棒関係。冷酷な半面、信仰心と信心深さを持ち、神のお告げにより殺し屋の引退を示唆する。
演じるのは後に数々の作品で個性的な役柄を演じる個性派俳優、サミュエル・L・ジャクソン。現在よりスマートな体系の若々しいサミュエルの演技にも注目ですね!
ブッチ・クーリッジ/ブルース・ウィリス
もう1人の主人公。引退間近のボクサーで、マーセルスに八百長試合を依頼される。マーセルス曰く、ボクシングでもトップクラスの実力があるものの、運に恵まれずに燻っている存在らしい。ファビアンという恋人がいる。
演じるのは言わずと知れたアクション俳優界のレジェンド、ブルース・ウィリス。今作の役ではいつもと違う、冴えないどこかやさぐれた中年ボクサーを演じています。『ダイ・ハード』シリーズの無骨さや『シックス・センス』のシリアスな演技とも違うブルースの姿を観れます。
”映画界一ついてない男”ブルース・ウィリスの出演映画9選!ハリウッドが誇るレジェンド俳優マーセルス・ウォレス/ヴィング・レイムス
ヴィンセントらが所属するギャングのボス。愛妻家だが自分を舐めた相手へ容赦なく制裁を加える残虐な一面も持つ。以前、嫉妬から妻の世話係を4階から突き落として殺したと噂される。スーツやアクセサリーでオシャレにキメているが、後頭部になぜか絆創膏をしている。
演じるのは『ミッション:インポッシブル』シリーズや『デスレース』シリーズ等に出演するヴィング・レイムス。今作で重要な役・マーセルスを演じ、その後の俳優キャリアにおいて数々の有名作品への出演を果たす事になりました。
ミア・ウォレス/ユマ・サーマン
元女優でマーセルスの妻。黒髪のボブヘアーで美しくセクシーなルックスだが、ドラッグの常習者でもある。タバコを燻らせている姿が印象的でポスターでも有名。
演じるのは、タランティーノ監督の代表作でもある『キル・ビル』シリーズで主役を務めたユマ・サーマン。この作品で出会った二人が後にタッグを組み、『キル・ビル』という大ヒット作を生んだんですね!『キル・ビル』の黄色いトラックスーツの印象が強い人も多いと思いますが、今作での白いシャツを着こなしてセクシーな表情を見せるユマにも注目です。
ブレット/フランク・ホエーリー&ロジャー/バー・スティアーズ
マーセルスのギャング直属の元青年メンバー。マーセルスのアタッシュケースを盗み裏切ったため追われる。2人とも追手のヴィンセントとジュールスに銃殺される。
パンプキン/ティム・ロス&ハニー・バニー/アマンダ・プラマー
強盗を生業としている不良カップルで、最後の強盗を計画する。イギリス訛りの英語を話すパンプキンと気性の荒い性格のハニー・バニーという癖のあるカップル。
ジミー/クエンティン・タランティーノ
恐妻の看護師を妻にするジュールスの友人。様々な作品でカメオ出演しているタランティーノ監督は今作で御多分に洩れず出演。
何個知ってる?映画『パルプ・フィクション』の小ネタ
出典:Amazon
タランティーノ監督といえば、ふんだんに散りばめられたネタやオマージュですね。今作でも勿論、その監督の遊び心と独自の表現は大爆発しております!
そこでここでは監督が映画『パルプ・フィクション』の中で登場する小ネタをいくつかご紹介したいと思います!
1.本作の主人公・ヴィンセント・ベガには兄弟がいる
クエンティン・タランティーノ監督のハリウッド処女作である『レザボア・ドッグス』に登場する強盗メンバーの1人、Mrブロンドの本名はヴィック・ベガ。
監督曰く、ヴィンセント・ベガとは兄弟とのことです。
2.商品は複数の作品間でリンクしている
作中でジュールスが食べているハンバーガー・ビッグ・カフナ・バーガーは架空のハンバーガーチェーン店。このハンバーガーも実は『レザボア・ドッグス』に登場しています。
また、本作に出てくるタバコの銘柄レッド・アップルは、『キル・ビル』でも看板として描かれています。アイテムからさりげなく世界観を共有する辺りにタランティーノ節を感じますね!
3.ジュールスの暗唱は千葉真一主演の映画『ボディーガード牙』から引用
かねてから千葉真一(サニー・千葉)のファンである事を公言しているタランティーノ監督。そんな監督の千葉真一への愛が映画内の表現として現れました。
暗殺をする際に、聖書を読み上げるという独特の行動を取る殺し屋・ジュールス。そんな超個性的なキャラクターである彼が暗唱した内容は以下のエゼキエル書25章17節を元に引用されたと言われています。
わたしは怒りに満ちた懲罰をもって、大いなる復讐を彼らになす。わたしが彼らにあだを返す時、彼らはわたしが主であることを知るようになる「エゼキエル書25章17節」 |
引用:Wikipedia
番外編.アタッシュケースの中身は何?
『パルプ・フィクション』ファンの中でも議論になったのが、ヴィンセントとジュールスが取り戻したアタッシュケースの中身は一体なんだったのか問題?ですね!
一説には、マーセルスの魂が入っていたのではないか、といった考察もあるようです。根拠は、マーセルスの首の後ろに絆創膏が貼ってあり、そこから悪魔によって魂を抜き取られたという物。残虐なマーセルスが悪魔に魂を売り、抜き取られた魂を取り返してアタッシュケースに入れて保管していた、というなかなか突飛な考察です(笑)
しかし本当の事はタランティーノ監督以外知る由もありません。いつの日か語ってくれる事を楽しみ待つのもいいですね!
上映時間 | 154分 |
監督 | クエンティン・タランティーノ |
キャスト | ジョン・トラボルタ、サミュエル・Lジャクソン、ヴィング・レイムス、ユマ・サーマン |
受賞歴 | カンヌ国際映画祭「パルム・ドール」 アカデミー脚本賞 等 |
公開日 | 1994年10月8日 |
まとめ
映画界の革命家・クエンティン・タランティーノ監督が生み出した傑作『パルプ・フィクション』。どこかジャンクっぽさ、B級っぽさがありながらも、ジョン・トラボルタやブルース・ウィリス等、レジェンド俳優達がキャストに名を連ねる華やかさもありますね。
現在でも多くの映画ファンに支持され、数多の映画監督や脚本家にも影響を与え続けている本作は、誰しもが一度は観ておきたい映画であることは間違いありません!