映画『レ・ミゼラブル』のネタバレあらすじ&キャスト紹介|時代背景と映画を彩る名曲たちを解説
映画『レ・ミゼラブル』は、トム・フーパー監督によって2012年に公開されたミュージカル映画です。映画化の企画は、1988年からプロデューサーのキャメロン・マッキントッシュと名監督アラン・パーカーによって進められていましたがなかなか進まず、頓挫してしまいました。その後2005年にマッキントッシュの映画化の想いが再熱。ミュージカル映画が制作されることが発表されました!
今作はニューヨークのリンカーン・センターで初公開され、スタンディングオベーションを受けました。その後も観客と批評家双方から肯定的な評価を受けています。また、日本では、ミュージカル映画で歴代1位の累計興収を獲得しています。
この記事では、複雑な時代背景や人物相関を丁寧にわかりやすく紹介します!これを読めば、”レミゼ”の登場人物たちが何を求めて戦っていたのか、心情を理解しやすくなるはずです。
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目次
世界中を魅了する映画『レ・ミゼラブル』について
原作は19世紀フランスの文豪ヴィクトル・ユゴーによる「ああ無情」
映画『レ・ミゼラブル』は同名のミュージカルを完全映画化した作品ですが、そのミュージカルの原作はフランスのロマン主義作家ヴィクトル・ユゴーが1862年に執筆した「ああ無情」です。原題「Les Misérables」の意味は「悲惨な人々」や「哀れな人々」という意味。たった一本のパンを盗んだために19年間も牢獄で生活することになってしまったジャン・バルジャンの話です。
物語は1815年から1833年の18年間のフランスを舞台に、当時の社会情勢や人々の暮らしなどを非常に細かく描写しています。
上下巻合わせると非常に文字数が多く、大ボリューム作ですので、活字に慣れている方は是非文豪・ユゴーの原作にもチャレンジして頂きたいです!
日本では黒岩涙香が翻訳した『噫無情』(ああむじょう)が1902年(明治35年)から約1年間、万朝報(よろずちょうほう)という雑誌に掲載されたことで作品が広まりました。
現在では様々な翻訳、著書がありますが、第一発起人である黒岩さんの著書は是非お読み頂きたいです。単行本としては少しお高めですが、とても貴重な著書となっています。
『レ・ミゼラブル』時代背景は七月革命前夜、激動の時代のフランス
『レ・ミゼラブル』の舞台は、今から2世紀程遡ります。
フランスは、それまで主流だった絶対王政に反発する形で起きた1789年のフランス革命がきっかけで、近代国家の道を歩み始めます。1804年、王に変わる形でナポレオン1世が皇帝に即位しますが、約10年ほどで失脚しブルボン家が王に復位。レ・ミゼラブルの話が始まるのはこの後の1815年、ナポレオン1世が再び皇帝に即位するところからです。その後ワーテルローの戦いで再び失脚し、ルイ18世が王に復位してしまうんですけどね。
1824年、そのルイ18世が亡くなり、シャルル10世の復古王政が始まります。そして1830年に、シャルル10世の専制君主政治に反対した学生や労働階級たちが自由主義を唱え、パリにバリケードを建てた”7月革命”が起こります。ここが今作のクライマックスだと言われています!
その後、7月革命で中心となった反政府派がルーブル宮殿を襲撃し、シャルル10世はイギリスに亡命。1814年から亡命していたルイ・フィリップが帰国し、”自由主義”と”立憲君主制”を採用して、7月王政が始まりました。
『レ・ミゼラブル』監督はヒット作連発のトム・フーパー
長い間愛されてきた『レ・ミゼラブル』の原作ファンやミュージカルファンたちが映画化に際して気になるのは、やっぱり監督ですよね!
今作の監督を務めたのは、数々のヒット作を手がけていることで有名なトム・フーパー。イギリスのロンドン出身で、子供の頃から映画監督になるのを夢見ていたんだそうです。わずか22歳でテレビドラマを手がけ、2004年の時に『ヒラリー・スワンク・IN・ダスト』で本格的な映画監督デビューを果たしています。
彼の代表作は誰もが知るくらいの名作だらけ。2010年、吃音に悩まされるイギリス王のジョージ6世を描いた『英国王のスピーチ』ではアカデミー賞監督賞を獲得し、2015年には世界で初めて性適合手術を受けた画家リリー・エルベの人生を描いた『リリーのすべて』を手がけ、ハリウッド映画祭で監督賞を受賞しました!
最近では、伝説のロックバンドQUEENの誕生から復活までを描いた『ボヘミアン・ラプソディ』で歴史的大ヒットを叩け出しています!今は映画界で知らぬ人はいないほど、有名な監督ですね。
10秒でわかる簡単あらすじ
コゼットを愛し、守り抜くことを誓ったバルジャンですが、ジャベールの追跡と市民革命は激化していきーー。
映画『レ・ミゼラブル』の多彩な登場人物と豪華キャスト!
ミュージカル映画である本作をより魅力的に仕上げたのは、なんと言ってもやはり実力派のキャスト陣ではないでしょうか。ミュージカルと同じ役を演じているキャストもいたりと、演技力と歌唱力双方で文句なしと言えるでしょう。
おすすめのミュージカル映画はこちらの記事(【洋画】おすすめのミュージカル映画25選|観るとハッピーになれる音楽をお届け!)も一緒にご覧ください。
贖罪を求め生きる主人公ジャン・バルジャン/ヒュー・ジャックマン
主役のバルジャンを演じるのは、端麗な容姿と高い演技力で老若男女問わずに支持されている、ヒュー・ジャックマン。1968年10月12日にオーストラリア・シドニーに生まれた彼は、2000年に映画『X-MEN』でメインキャラクターのウルヴァリンを演じたことで一躍スターへの仲間入りを果たし、『グレイティスト・ショーマン』では持ち前の演技力だけでなく歌声でも観客を沸かせました!
今作でヒューが演じるのは、トゥーロン徒計場に19年間服役した主人公、ジャン・バルジャン。空腹で弱っている妹の子供のために1本のパンを盗み、5年の服役を宣告されましたが、脱獄を試みたことで19年に刑期が伸びてしまいました。
刑期を終えて仮釈放され、行くあてもなくさまよっているところで司教のお世話になります。その夜に銀食器を盗んでしまい警察に捕まりますが、司教は「あげた物だ」といって助けられ、その優しさに触れたバルジャンはまともに生きることを誓います。そして8年後、名を”マドレーヌ”に変え、温厚な人柄で工場の経営者と市長として民衆から支持されています。
今作を演じたヒュー・ジャックマンの演技は全米の批評家らに絶賛され、ゴールデングローブ賞の主演男優賞を受賞しています!
【最もセクシーな男】ヒュー・ジャックマンが出演するオススメ映画7選!娼婦に身を落とすコゼットの母ファンティーヌ/アン・ハサウェイ
ファンティーヌを演じるのは、映画『プラダを着た悪魔』などで知られるアン・ハサウェイ。コメディエンヌとしてハリウッド界の地位を不動のものにしている名女優です。
1982年11月12日にアメリカのニューヨーク州に生まれた彼女は、高校時代には合唱団の一員として活動し、カーネギー・ホールの舞台に立ったこともあるんだとか。それもそのはず、本作でアンは抜群の歌唱力を披露しています!また、彼女自身が本作に「役者人生の全てを懸けた」と言っているように、役作りのために約11kgも減量し、11ヶ月後に結婚式を控えていたのにも関わらず、トレードマークのロングヘアをバッサリ刈ったりと、凄まじい役者魂を見せています。
彼女のファンティーヌ役に対しての思いがこんなに強いのは、ミュージカル女優だった彼女の母親が過去に演じた役だからそう。その成果もあり、ゴールデングローブ賞とアカデミー賞で助演女優賞を獲得しました!
彼女が演じるファンティーヌは、娘のコゼットを1人で育てながら工場で働いています。娘がいることを工場には内緒にしているが噂になっており、それが原因で工員と揉め、クビになってしまいます。コゼットを育てるために自らの髪や歯、次第には体まで売るようになり、やがて肺病にかかってしまうんです。客と揉めていた時にバルジャンに助けられたことで知り合います。
アン・ハサウェイ出演のオススメ映画13選!華麗な容姿と圧倒的な演技力で大人気ジャンが保護し育てる娘のコゼット/アマンダ・サイフリッド
ファンティーヌの娘コゼットは、ファンティーヌが工場で働いている間テナルディエ夫婦に預けられ、彼らが経営している売春宿の女中としてタダ働きさせられています。お城に住むことを夢見て日々働き、ある日の夜中、水を汲みに出かけた真っ暗な森でバルジャンと出会い、引き取られます。
それから修道院で育ち、美しい女性に成長。バルジャンの過去が気になりながらも平凡に暮らしているある日、街で見かけたマリウスに一目惚れをし、お互い恋に落ちます。この恋はその後の革命にも影響を及ぼす非常に重要な出来事です!
そんなコゼットを演じるのは、映画『ミーン・ガールズ』でデビューした後『マンマミーア!』や『赤ずきん』で知られるアマンダ・サイフリッド。現在も様々なハリウッド映画に引っ張りだこの若手実力派女優です。
正義と人情のはざまで葛藤する刑事ジャベール/ラッセル・クロウ
ジャベール警部は、バルジャンが服役していたトゥーロン徒刑場での看守を経て警官になりました。服役囚の両親の元に生まれ、トゥーロン徒刑場で育ったジャベールは、社会秩序を乱す者は例外なく罰する非常に厳格な人物。徒刑場でバルジャンに船のマストを1人で担ぎ上げさせ、彼の怪力ぶりを知ることに。
その8年後警官になり、事故の現場でバルジャンが馬車を持ち上げる姿を見てバルジャンの正体に気づきます。罪人には事情も気にせず悪だと決めつける性格で、その後もバルジャンを追い続けます。最終的には自分の中にあった正義感が揺らいでしまい、セーヌ川に身を投げることに。
クセ者で奥が深いジャベールを演じたのは、ニュージーランド出身の俳優ラッセル・クロウ。彼は豪映画『グラディエーター』でアカデミー主演男優賞、『ビューティフル・マインド』でゴールデングローブ賞の主演男優賞を受賞した、超演技派俳優です!
運命的な恋に落ちるマリウス・ポンメルシー/エディ・レッドメイン
マリウスは、裕福な家庭に育ち、家族に反対されながらも反政府組織ABCに所属している学生。蜂起の準備中に街でバルジャンと歩いているコゼットを見つけて一目惚れをして彼女の家をエポニーヌに聞き、鉄柵越しにコゼットとの愛を確かめ合います。コゼットと恋と革命の間で迷うものの、最終的には革命に参加。
蜂起中に兵士の攻撃で気絶したところをバルジャンに助けられます。その後目覚めると、仲間が全員亡くなってしまったことに罪の意識を覚えますが、コゼットによって慰められ、その後2人は結婚を決めます。
原作でも”美男”として書かれているマリウスを演じるのは、『博士と彼女のセオリー』や『ファンタスティック・ビースト』で知られるエディ・レッドメイン。英国出身の彼は、英国一の名門”イートン校”や”ケンブリッジ大学”を卒業しています!マリウスと同じくエリートの家系出身で、家族全員がレミゼのファンなんだとか。反政府組織に所属しながらもどこか高貴な雰囲気を醸し出しているのは、彼の内面的な魅力ですね!他のキャストと同じく、彼もアカデミー主演男優賞の受賞経験がある実力派俳優です。
エリート俳優エディ・レッドメイン出演のおすすめ映画特集!『レ・ミゼラブル』他悪徳売春宿の主人テナルディエ/サシャ・バロン・コーエン
テナルディエは妻とともに売春宿を経営しており、客から何か理由をつけては金品を巻き上げています。ファンティーヌからコゼットを預かっていて、バルジャンがコゼットを引き取ると言った時にもバルジャンに高額な金額をせびり、払わせました。それから9年後はパリで乞食のような貧しい生活をしており、仲間とバルジャンの家を襲う計画を立てますが、失敗に終わります。蜂起の時には死体から金品を盗んだりと、原作の作者ユーゴーにすら「救いようのない」と言われてしまうほどの悪党。
そんなテナルディエを演じたのは、コメディアン・俳優・ラッパーと多方面で活躍するイギリス出身のサシャ・バロン・コーエン。学生時代から舞台を中心に活躍しており、ユーモラスな役を多く演じている演技派俳優です。
名女優演じる憎めない悪役テナルディエ夫人/ヘレナ・ボナム=カーター
テナルディエ夫人は夫とともに悪徳売春宿を経営しており、青年に色目を使って金品を盗んだりとズル賢い性格の女性。娘のエポニーヌを溺愛する一方で、コゼットをいじめ、精神的な虐待をしているとも言えます。
そんなテナルディエ夫人を演じるのは、イギリス出身の名女優ヘレナ・ボナム=カーター。『ファイト・クラブ』では麻薬に溺れるマーラ役を始め、『ハリーポッター』シリーズではヴォルデモート卿のベラトリックス、『アリス・イン・ワンダーランド』の赤の女王など、個性的な役を多く演じ、評価されています。
本作では、悪党だけどなぜか憎めないテナルディエ夫人を絶妙に演じていて、ヘレナ以外の配役は考えられないどマッチしています!
歌唱にも注目の悲劇のヒロイン、エポニーヌ/サマンサ・バークス
テナルディエ夫妻の娘のエポニーヌは幼少期にコゼットと共に生活していたことを覚えていて、かつてはいじめられていたが裕福な娘に成長したコゼットと状況が逆転していることを気にしています。マリウスを心から愛しており、コゼットに一目惚れしたマリウスのためにコゼットの家を探したり、蜂起の際に撃たれそうになったマリウスの身代わりになって死んだりと、まさに”悲劇のヒロイン”という言葉がぴったり。
そんなエポニーヌを演じるのは、舞台版『レ・ミゼラブル』のオーディションでこの役を獲得し、映画でも同役を演じることとなったサマンサ・バークス。なんとこの役、オーディションに参加したテイラー・スウィフトに決まりかかっていたんだとか!それでもトムは、サマンサの方が役柄に合っていると言ってサマンサに決まりました。
大義のために戦う少年ガブローシュ/ダニエル・ハトルストーン
反政府組織ABCに所属するガブローシュは、正義のために身を呈して戦う少年。スパイとしてABCにジャベールがやってきたときにはスパイだと暴きABCを救ったり、マリウスからコゼット宛の手紙をバルジャンに届けたりと、浮浪児でありながら(ズル)賢く明るい性格です。蜂起では”民衆の歌”を歌って雰囲気を変えようとしたり、バリケードから兵士に向かって1人で進んだりと勇気のある少年でもあります。
ガブローシュを演じたのは、幼い頃からミュージカル『オリバー!』や『サウンド・オブ・ミュージック』で活躍している実力派俳優ダニエル・ハトルストーン。本作の後には、同じくミュージカル映画の『イントゥ・ザ・ウッズ』でも歌声を披露しています!
革命のリーダー、アンジョルラス/アーロン・トヴェイト
ABCのリーダーを務めるアンジョルラスは、容姿端麗な学生で裕福な家庭に生まれました。マリウスと同じ思想を抱いており、愛国心が強い彼は、コゼットと革命の間で心が揺れるマリウスを革命に参加するよう説得します。リーダーシップが強く、革命の知識が豊富なのも特徴です!原作小説では”天使のような美青年”と記述されています。
アンジョルラスを演じるのは、テレビドラマ『ゴシップガール』などで名の知れたアメリカ出身の俳優アーロン・トヴェイト。2006年にはミュージカル『ヘアスプレー』でブロードウェイデビューを果たし、その後もコツコツと舞台を中心に活躍している実力派俳優です!
一大スペクタクルな映画『レ・ミゼラブル』のあらすじ
以下映画のネタバレを含みますので、まだ御覧になっていない方はご注意ください!
【レ・ミゼラブルあらすじ①】ジャン・バルジャンの過去
舞台はブルジョワ層と民衆の貧富の差が大きく、貧困に苦しむ人々が街中に広がっている19世紀のパリ。19年間収監されている囚人番号「24601」ジャン・バルジャンは怪力の持ち主で、看守のジャベールに船のマストを1人で担がされるなど今日も過酷な労働を強いられている。彼が犯した罪は、飢餓に苦しむ妹の子供のためにたった1本のパンを盗んだことだった。そんな彼のもとに、仮釈放書を持ったジャベールがやってくる。
バルジャンは条件付きの仮釈放を許され街へ戻るも、彼を気にかけてくれるものなどいない。行くあてもなくさまよっていた時、司教がバルジャンに手を差し伸べ、食事と寝床を提供してくれた。だがその夜、バルジャンは教会から銀食器を盗んで逃げ、警察に捕まってしまう。
司教の元に連れてこられたバルジャンに司教は、「その銀食器は自分があげたものだ」といって彼を助ける。更に2本の燭台を手渡す。司教のやさしさと信念、そして神の存在に心を強く動かされたバルジャンは仮釈放書を破り、名前を変えて新しい人生を歩むことを決意する。
【レ・ミゼラブルあらすじ②】コゼットとの出会い
それから8年後、バルジャンは”マドレーヌ”と名前を変え、市長を務めながら工場の経営者をしており、その人情深さで人々から高い支持を得ていた。
ある日、彼の工場で騒動が起こる。その工場で、女性工員のファンテーヌ宛に、彼女が日中娘を預けている夫妻から借金催促状が届く。ファンティーヌは娘のことを、工場には内緒にしていた。その手紙を彼女のことを妬んでいる女工員が読み上げたことで、ファンティーヌを手に入れようと狙っていた工場長の怒りを買い、彼女は工場をクビになってしまう。バルジャンは工場のことはほぼ全て工場長に一任しているため、この騒ぎのことを知らなかった。
仕事を失い、唯一の収入がなくなったことで小さい娘を養うことができなくなってしまったファンティーヌは、やがて自らの髪や歯を売り、やがて体も売るようになってしまう。
そんな時、客に刃向かったファンティーヌがジャベールに逮捕されそうになているところをバルジャンが助け、ファンティーヌを病院に連れて行く。その際にジャベールはバルジャンに脱獄していたジャン・バルジャンが捕まり裁判が開かれていることを告げる。罪のない人物が自分のせいで罰せられていることを知り後ろめたさを感じた彼は、罪を告白することを決める。
裁判所にて「市長である私がジャン・バルジャンだ」と宣言したバルジャン。彼はその後裁判所を逃げ出し、病気で死にそうになっているファンティーヌの元へと向かう。かなり衰弱していた彼女はベッドの上で息を引き取り、コゼットをバルジャンに託す。ファンティーヌが工場から追い出されたのは自分のせいだと責任を感じたバルジャンは、コゼットを宿舎へ迎えに行くことに。
宿舎へ向かう途中、脱獄したバルジャンを追ってきたジャベールが立ちはだかる。バルジャンは、コゼットを助けるために数日だけ待って欲しいと頼むが、厳格なジャベールは聞く耳を持たない。そこでバルジャンは川へ飛び込み、その場をしのぐ。ジャベールはバルジャンを逃したことしまったことで、より一層彼を追うことに執念を注ぐことに。
一方のバルジャンは宿屋に到着してテナルディエ夫妻に1,500フランを渡し、コゼットを引き取ったバルジャンはジャベールから逃げるために修道院へと行き着く。そこには、以前荷馬車の下敷きになっていたところを助けた男がおり、バルジャンは彼にかくまってもらう。
【レ・ミゼラブルあらすじ③】革命と運命の恋の気配
それから9年後、バルジャンに一人娘として大切に育てられていたコゼットは、美しい女性に成長していた。2人で街に出かけた時にコゼットは偶然マリウスを見かけ、一目惚れをする。反政府組織ABCの主要メンバーとして活動していた彼も、その時コゼットに一目惚れをしていた。
革命の準備を着々と進めていたABCのメンバーたちだったが、マリウスはコゼットのことで頭がいっぱいで活動に手がつかない状態になってしまう。どうしても彼女と距離を縮めたいマリウスは、テナルディエ夫婦の娘エポニーヌに彼女の家を調べて欲しいと頼む。エポニーヌはマリウスのことを心から愛しており、複雑な気持ちで引き受ける。
その晩にエポニーヌに連れられ、コゼットの家で彼女と再会したマリウスは、柵越しに愛を確かめ合う。その姿を遠くから見つめていたエポニーヌは、マリウスに愛されることは不可能だということを悟り、嘆く。
一方、貧困で宿屋を手放したテナルディエ夫婦は、富裕層から金を捲し上げる詐欺をしながらホームレス生活をしていた。街で貧困に苦しむ民衆に施しをしているコゼットの正体に気がついたテナルディエ夫妻は、娘を連れ去ったとバルジャンに金銭を要求している時に、ジャベールがやってくる。9年間バルジャンを追い続けていたジャベールにとうとう居場所がバレてしまったのだった。
バルジャンたちは直ちに引っ越しを決め、マリウスとコゼットは離れ離れになってしまう。コゼットは彼に手紙を残すが、その手紙はエポニーヌに渡ってしまう。マリウスはコゼットが街を去ってしまうことを知りショックを受けながらも、ABCの仲間と革命を起こす。
【レ・ミゼラブルあらすじ④】革命当日、いよいよクライマックスへ
反政府組織のABCは各所にバリケードを作り暴動を起こすが、軍隊との力の差は明らかであり、攻められる一方だった。そんな時、コゼットからの手紙を持ったエポニーヌが撃たれてしまう。死ぬ間際で手紙を渡し、彼女はマリウスの腕の中で息をひきとる。
一方で暴動の鎮静を指揮していたジャベールは自らスパイとしてABCに潜入するが、あっさりとガブローシュに正体を明かされ、捕らえられてしまう。そこで、マリウスがコゼットに宛てた手紙を受け取ったことで娘の気持ちを知ったバルジャンがバリケードにやってきた。バルジャンは青年たちに「自分にジャベールを任せて欲しい」と頼み、拳銃で殺したふりをして彼を逃す。
勢いを増した軍に追い詰められていた青年たち。マリウスも撃たれており、瀕死の状態だった。ABCのメンバーたちは全滅していたが、バルジャンは娘が愛するマリウスだけは助けようと彼を担いで必死に逃げる。下水道を通りながら逃亡していたバルジャンたちはまたしてもジャベールに追い詰められてしまうが、ジャベールは彼らを逃がす。そして、自分の中での「正義」が揺らいだジャベールは自らの身をセーヌ川に投げ、自殺する。
革命は失敗に終わり、マリウス以外のABCのメンバーは全員死んでしまった。バルジャンはコゼットとマリウスを引き合わせ、自分の過去を全て語る。そして、彼らに内緒で身を隠すことを決めた。
コゼットは深く悲しんだが、マリウスとの生活を幸せに暮らしていた。そして結婚式当日、テナルディエ夫婦からバルジャンが修道院にいることを聞く。そして、革命の日に自分を救ってくれたのはバルジャンだと知り、マリウスとコゼットは彼の元を訪ねる。こうして、バルジャンはマリウスとコゼットに看取られながら亡くなった。天国から彼を迎えにきたのは、ファンティーヌであった。
映画『レ・ミゼラブル』の魅力を徹底解説!
1.原作から語り継がれる、愛の力
この映画は、アカデミー賞7部門、ゴールデングローブ賞4部門にノミネートされ、
この作品を通して作者ヴィクトル・ユゴーが伝えたかったのは、映画のキャッチコピーにもなっている「愛とは、生きる力」だということです。
このことはコゼットを思うバルジャンの心境によく表れています。ファンティーヌからコゼットを託された時、彼の人生の目的が”コゼットを愛し、守り続けること”に代わり、そして自分と同じようにコゼットを愛するマリウスが現れると自らの任務を全うしたかのように、この世を去るんです。元は罪人だったバルジャンですが、コゼットへ愛を注ぎ続けたことで、ファンティーヌに導かれながら天国へと旅立ったのではないでしょうか。
また、映画のキャッチコピーとは別にメインになっているのは、もう1つのテーマとも言える「許し」です。
バルジャンが真っ当に生きると決意するきっかけとなったのは、バルジャンが銀食器を盗んだ時に司教がそのことを許したから。そこでバルジャンは改心し、温厚な性格で知られる市長として人々を助けることになったのです。
2.劇中に登場する、数々の名言
オープニングからラストまで、セリフはほぼ全てが歌で構成されている本作ですが、その中でも数々の名言が登場します。ここでは、名作家ヴィクトル・ユーゴーが生み出した平等、受容、そして愛についての名言を紹介します。
「この貴重な銀の燭台を使って、正しい人間となるのです(You must use this precious silver to become an honest man.)」/ミリエル司教
この名言は、教会から銀食器を盗み警察に捕まったバルジャンをもう一度救った際に、司教が放った言葉。銀食器をそのままあげただけでなく、銀の燈台も手渡してバルジャンを許します。19年間孤独と絶望を味わい続けた彼にとって、人の優しさに触れたことが彼の今後の人生に影響を与えたのでしょう。
「 死ぬときだけはみんな平等。平等とはこういうことだなんだ。(Here is the thing about equality, everyone’s equal when they’re dead.)/ガブローシュ
王政が復活した当時のパリは貧困差が激しく、かつては”自由と平等”のために戦っていた市民達も、今では”パン”のために戦っていると提議したガブローシュの名言。常に希望を捨てず、自らの行動をもってABCの仲間達を幾度となく元気付けてきた彼らしい言葉ですね!
小説では、幼い頃から親に捨てられ1人で路上生活をしている背景が書かれているガブローシュ。平等なんて存在しないとわかっている彼だから説得力がありますし、私たちが生きる現代にも共通して言えることですね。
「彼は若く、恐れている。彼に休息を。神の祝福を。彼を無事に家に帰らせたまえ。(In my need, you have always been there. He is young, he’s afraid. Let him rest, heaven blessed. Bring him home, bring him home. Bring him home.」/ バルジャン
コゼットとマリウスの関係を知ったバルジャンが、マリウスが蜂起に参加したことを知ったときに放った言葉。コゼットが必要とするときいつもそばにいたマリウスを救うため、命をかけて彼を助けに行くんです。そのおかげでマリウスはABCの中で唯一助かり、コゼットと結ばれることになります。
愛するコゼットが幸せになるためには、何も惜しまず戦い抜くという、バルジャンの覚悟が見られる感動的な名言です。
「君を責めることなど何もない。君は務めを果たしただけ。それだけだ。(There’s nothing that I blame you for. You’ve done your duty, nothing more.)」/ バルジャン
ABCが築いたバリケードにスパイとして潜入し、捕らえられたジャベールの処分を自ら申し出たバルジャンが放った言葉。長年追われてきたバルジャンがようやく解放されると思いきや、彼はシャベールを許し、逃すんです。
バルジャンを執拗に追いかけていたシャベールにとっての”正義”がブレる瞬間であると同時に、ジャベールにとっても何かから解放された瞬間とも言える場面です!
「憎しみを抱えた男が愛を覚えた物語だ。君を預かってから。(It’s the story of one who turned from hating – a man who only learned to love when you were in his keeping.)」/バルジャン
修道院で死を迎えようとしていたバルジャンの元に、居場所を聞いたマリウスとコゼットがやってきた場面。コゼットに向けて書いた手紙を渡した際にいう言葉です。19年間孤独に生き、どん底にいたバルジャンにとって、愛を注ぐ存在が現れたことがどれだけ大事だったか分かる名言ですね!
3.歌唱シーンへのこだわりと、心に残る名曲5選!
ミュージカル映画といえば、劇中に登場する歌を楽しみにしている方も多いはず。そこで、本作が他のミュージカル映画に比べて優れているのは、実際に歌いながら撮影するという方法!一般的なミュージカル映画では口パクの演技にあとで歌を収録する”アフレコ”が使われていますが、本作は違います。この方法のおかげでまさにミュージカルを見に行っているように感じるほどの迫力が出ているという声を多く目にします!
歌唱力だけでなく、ミュージカルから引き継がれている名曲にも注目です。それでは、これだけは特に聞き逃して欲しくない曲を5曲、紹介します。
夢破れて(”I dreamed a dream”)
職を失い、コゼットを養うために娼婦に成り下がってしまったファンティーヌはさらに歯を売り、髪の毛を刈り、心身ともにボロボロになってしまいます。「思い描いていたのはこんな世界ではなかった」と嘆く歌詞が非常に悲しく、彼女の苦しみがひしひしと伝わってくる歌です。
アン・ハサウェイはこの歌を、3分ノーカットで歌い続けたんだとか!涙を流しながら歌っている姿に涙が止まりません。
https://t.co/oWyngEgCux この曲が前から凄く好きで、随所に差し込まれるシーンを見て映画のほうもどうにも見てみたくてしょうがなくなり昨日初めて見た「レミゼラブル」。凄いスケールだった。アカデミー賞の「最優秀美術賞(そういうのあるよね)」とかとってないのこれ?なんかすごかったよとにかく
— 赤澤 智 (@ojamarucoffee) November 7, 2019
民衆の歌(”The People’s Song”)
ABCのメンバーがバリケードの中で歌うこの歌は、自由を求める反政府軍の象徴とされています。何度か登場するこの曲ですが、特に感動するのが、もう後がなくなったABCがバリケードに立てこもっている時、ガブローシュがこの歌を口ずさみながら政府軍の前に現れるシーンです。死を恐れず、自由のために戦い抜くというガブローシュの決意の固さに、何度観ても泣いてしまう場面です。
本作を象徴するものの1つであるこの歌は、一度でも聞いたことがある方が多いのではないでしょうか。歌詞の一部はフランスの国歌(ラ・マルセイエーズ)に影響されており、フランスだけでなく、世界各国も有名な曲です。
映画「レ・ミゼラブル」
より、民衆の歌♪〜https://t.co/809jMxkIaA— ごんこ (@gonko1234) November 10, 2019
オン・マイ・オウン(”On my own”)
マリウスを思い続けているエポニーヌは、コゼットに一目惚れをしたマリウスから手紙を渡してほしいと頼まれてしまいます。誰よりも彼のことを愛しているのに、叶うことはないとわかってしまったエポニーヌの感情が表れている、彼女のソロ曲。
彼女の切ない恋心と孤独が、雨に打たれることでより悲観的に感じられ、サマンサ・バークスのパワフルな歌声にも心を打たれる場面です。
心は愛に溢れて(”A Heart Full of Love”)
エポニーヌにコゼットの家まで案内してもらったマリウスが、家の柵越しに愛を語り合う純真な一曲。街で遭遇し、お互い一目惚れをした2人にとってこの再会は、言葉で表せないほどの喜びだったはず。その心境が2人の表情に表れているのがとっても可愛らしく、見ていて笑顔になれる曲です。しかしそれでも、途中に映るエポニーヌの心境を考えると、複雑な気持ちになります…
また、この歌はマリウスとコゼットの結婚式でも披露されます。2人を象徴するかのような歌ですね!
囚人の歌(”Look Down”)
映画のオープニングのシーンで、バルジャンが他の囚人たちと船を引きながら歌っている歌です。ジャベールに見下ろされながら、顔を合わさぬように、目立たぬように下を向いてひたすら綱を引き続ける場面は衝撃的。また、ジャベールに船の支柱を1人で箱ばされる場面もこの歌の一部分ですので、その後の展開にも重要な歌です。
序盤からこの大きいスケールに圧倒されること間違いありません!
https://t.co/wg0kc7iZKy @youtubeより
レ・ミゼラブル
ヒュー・ジャックマンの
『囚人の歌』— M.Ka_nou (@meerdem57) December 25, 2017
レ・ミゼラブルあらすじのまとめ
『レ・ミゼラブル』を映画化するにあたって多くの努力や工夫が施されている本作は、原作やミュージカル版を忠実に、そして更にグレードアップしてある超大作です!
しかし、時代背景が濃く、登場人物がそれぞれ複雑だったりと、なかなか物語を理解するのが難しいという方も多くいらっしゃるかと思います。そんな方にもこの映画を全力で楽しんだいただけるよう、細かい設定も絡めて紹介しました!ぜひ、作品をご覧になってみてくださいね。