なぜ犬は無事だった?映画『アングスト/ 不安』をネタバレ解説&考察!
世界中で公開禁止となった“狂作”とも呼べるスリラー映画『アングスト/不安』。封印されてから37年間の時を経て、2020年に各映画館にて公開されました。「問題作」「観る者の心を破壊する」など、恐ろしきキャッチフレーズで話題を集めましたが、実際はどんな物語なのでしょうか?
ネタバレを含みながら、作品の狂気度、そしてモデルとなった事件を解説していきます。これから鑑賞する方は、心の準備をしておくようにお願いしますね……!
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目次
映画『アングスト/不安』について
『アングスト/不安』そのもの初公開は1983年、約40年近く前に遡ります。実在するオーストリアの殺人鬼・ヴェルナー・クニーセクの犯行を基に制作されたストーリーで、彼の異常性をたっぷりと描いた作品となっています。
しかしあまりの凶暴性、理解不能な狂気さに世界中で即上映中止に!それ以降封印され続けた、“いわくつき”の映画であることは間違いありません。
当時は日本公開に至らなかったため、VHS版だけが出回っている状態だったそう。「鮮血と絶叫のメロディー/引き裂かれた夜」というタイトルで発売され、2020年に『アングスト/不安』と改されて上映することになりました。
監督はゲラルト・カーグル。この映画の製作に全力投球し、製作費などは全て自分1人で調達した逸話が残っています。公開は中止となってしまい、大きな負債を抱えたことから、『アングスト/不安』以来長編映画には手を出していません。現在は広告活動や教育映画に力を入れているそうですよ。
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【ネタバレなし】『アングスト/不安』の簡単あらすじ
幼少時代に恵まれない生活を送ってきたK(アーヴィン・リーダー)は、ある日衝動的に老夫婦を殺害しました。刑務所に10年ほど服役していたのですが、変わらず殺人に対する衝動は消えません。そのまま3日間の仮出所を言い渡され、出たきた瞬間から殺人の計画を練り始めるのでした。
狙いを定めたのはとある屋敷。母、息子、娘の3人で暮らす家に忍び込み、欲望のままに狂気をふりかざしていきます……。
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『アングスト/不安』のネタバレあらすじ
理解のできない狂気に塗れた殺人鬼・K。私たち鑑賞者は彼の持つ凶暴性を目の当たりにします。心の準備はできていますか?以下、ネタバレを含みますのでご注意ください!
【あらすじ①】歪んだ環境が引き起こした弊害
成人男性のK(アーヴィン・リーダー)は銃を片手に街を歩いていた。老夫婦の住む一軒家を訪ねると、そのまま迷わず2人を射殺。即座に逮捕されるも、Kと老夫婦は何の関係もない赤の他人ということがすぐさま発覚した。
彼は幼少期に身内に恵まれず、数々の犯罪を繰り返しながら生活していた。実の母も体のあちこちをメッタ刺しして殺害しており、人生のほとんどを刑務所の中で過ごしている状態だ。
母や祖母に見放され、養父には体罰同然のしつけをされる……。妹ばかりが可愛がられる状況で、少年時代のKはどんどん歪んでいった。動物を平気で殺し、白鳥の首を斬ったことさえある。切り口から溢れた血に口をつけ、祖母に入れられた修道院を追い出された。
狂った行動は一向に収まらず、14歳の頃には47歳の女性と付き合い、SM行為をはたらいていたのである。女性はマゾヒストで、Kに様々なことを教えた。それに呼応するように彼も、サディズムの気がどんどん目覚めていったのだ――。その後に付き合った売春婦と客の行為をただただ眺めるだけなど、理解の出来ぬ行動が続く。
老夫婦殺害事件後、K本人は精神異常を訴えるが医者から認められることはなかった。サディズムの気質はあるが、精神異常ではないと判断されたからである。服役中も殺人に対する衝動は消えず、そのまま3日間の仮出所の日を迎えてしまう。
【あらすじ②】Kの止まらない殺害衝動
出所を言い渡されても反省の色がまるでない。それおろか、Kは次の殺人計画を頭の中で描きながら1人で興奮していた。絶対に次は捕まらない――、そう心に誓っていたのだ。見かけたコーヒーショップに立ち寄り、若い女性2人に狙いを定めるも、その場で派手に殺すことはできない。一旦店から出て、掴まえたタクシー運転手の女性をターゲットとするのだった。
女性を絞め殺そうとするも未遂に終わるK。勢いで車内から飛び出したが興奮と刺激がおさまらなかった。林の中を逃げ回って辿り着いた先は、ポツンと建った大きな屋敷……。次はこちらをターゲットにし始めたのである。
しかし人が住んでいるかもわからず、興奮を抑えながら慎重に行動するK。窓ガラスを割って侵入するも、屋敷にはあまり人の気配がない。「ここに人は住んでいるハズ」と確信しながら進むと、障害の持った車椅子の男性が一人。彼は障害のせいか、Kに対して怯えることもなく、ただひたすらにこちらを見つめているだけだったのだ。
【あらすじ③】思い描いていた殺人計画
やがて屋敷に住む母と娘、ペットの犬が帰宅。Kは室内で息を潜めながら、計画実行のタイミングをはかっていた。遂に犯行は開始され、車椅子の息子を蹴飛ばし、娘の足をドアノブへと縛り付ける。母親の首を絞めて想像通りのシナリオを描いたはずが、彼の中の“何か”が納得しない。彼女が青白い顔で倒れたところで、Kは一旦座り込んでしまうのだった。
妹ばかりが可愛がられていたこと、母や祖母から酷い仕打ちを受けた経験から女性に対する憎しみが特に大きい。だがそれと同時に、トラウマとも呼べる恐怖感を抱いていた。彼にとって最高のシナリオは母親(この場合は屋敷内の女性)へ最愛の家族の死を見せつけること。自分の母親と贔屓されていた妹を重ね合わせて、この屋敷で殺人を行っているのである――。
だがK自身も衝動的に息子を浴槽に沈めて殺し、肝心の母親もすでに息を引き取っていた。結局計画通りには進まず、残ったのは娘だけとなってしまう。屋敷内でKに追い詰められた娘は裏口の通路でメッタ刺しにされ、死亡。娘の首元からあふれ出る血を夢中になって飲み続ける。
興奮したままズボンを下ろすK。冷たく暗い通路で死体と共に眠りにつくのだった。
【あらすじ④】殺人鬼の結末
時間をかけて殺害を行おうとしていたものの、全員あっさりと死んでしまった。目を覚ましたKは再度計画を練り、「この死体を見せて恐怖心を抱かせた後に殺害する」と新たなシナリオを描き始める。
計画を実行するにはターゲットを探しに行かねばならない。3つの死体を車のトランクに積み、血まみれとなった自分の体と服を適当に洗ってから車を走らせた。生き残った犬は何が行われているか分からず、いつものお出かけの如く、Kと共に車へ飛び乗った。途中あまりの興奮により自動車事故を起こすも、彼はその場を逃亡してしまう。
目指した先は出所後に訪れたコーヒーショップ。昨日と全く同じ顔触れで、最初に目を付けた2人の女性の姿もあった。早速彼女達に狙いを定めるも、Kは興奮を抑えられない……。血の付いた手を消すためにはめたグローブのまま、フランクフルトを手づかみで食す。入店後から様子のおかしいKに気づいていた客たちは、不審な目で見つめていた。
フランクフルトを犬にあげるため一度車に戻るK、その時にはすでに警察がズラリ。店員たちが怪しんで通報していたのである。車のトランクを強制的に開けさせられてKは逮捕。その後終身刑を言い渡され、脱獄を試みるもあえなく失敗に終わったそうだ。
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映画『アングスト/不安のキャスト』
キャスト紹介と言っても、ほとんどの場面がKのみとなっているので、Kのみ紹介していきます。
K/アーヴィン・リーダー
家庭環境が関係して少年時代から異様な行動を繰り返していたK。14歳で47歳の女性と付き合い、SM行為をしていたなんて驚いてしまいますよね……。動物をも簡単に殺し、実の母さえ刺殺。未成年の頃からそうだったのですから、成人後も犯罪を繰り返すのも無理はないでしょう。
逮捕後も脱獄をはかるなど、罪の意識が本当に低いのです。恐ろしき殺人鬼、の一言だけでは片づけられない――。それが「K」という人物なのですね。
Kを完璧なまでに演じ切ったのは俳優のアーヴィン・リーダー。『シンドラーのリスト』などに出演するオーストリアの俳優で、ハリウッドにも進出しています。彼の高い演技力は多くの人の心を掴み、非常に話題となりました。
実在したK、ヴェルナーという人物とは
実在した人物であるK、本名はヴェルナー・クニーセク。夫婦以外の間で生まれた「私生児」だったことから、学校を休みがちに。幼少期から盗みや家出を繰り返していたそうです。作中と同じく母親を殺しており、強盗などの罪で数回逮捕されていました。
自宅忍び込み一家を惨殺したのも本当で、作品よりも惨たらしい方法で殺害しています。7~11時間に渡る拷問を繰り返し、ターゲットにした母親に薬を与えて一度延命→再度拷問など、人間として信じられない行動をはかります。そして死体と一夜を明かし、トランクに詰め込んで車を走らせるのでした……。
レストランにてグローブをはめたままの食事、現金を大量所持したことに店員が疑問を抱き、通報。逮捕へと至ったのです。
逮捕後は独房にて自殺を図るも失敗、後に終身刑を言い渡されます。脱獄も失敗しているため、現在も暗い堀の中で刑期を待ち続けているのでしょう。
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映画『アングスト/不安』をネタバレ有りで考察!
次に、『アングスト/不安』をネタバレ有りで考察していきます!
【その①】なぜ犬が無事だったのか?
生理的嫌悪感を掻き立てられる演出が多い中、唯一の癒しどころが可愛いワンちゃん(笑)やたらと犬のカットが多く、映るたびに心が落ち着く人も多かったのではないでしょうか。Kと向かい合っても殺されることなく、ラストは一緒に車へ乗り込む姿まで見せています。
「なぜ犬だけ無事?」と疑問を抱いたとは思いますが、どうやらこのワンちゃんは脚本家・ズビグニェフ・リプチンスキーのペット。現場をウロウロしていたところ、監督のゲラルトが役として任命したそうです。
実際の事件では一家のペットであった猫が一緒に殺害されています。ヴェルナーは捕まりたくなかったので「目撃者がいると困る」といった理由で飼い猫を殺しました。作中ではその意志が描かれていないために、犬は無事だったのでしょう。ズビグニェフのペットだったから殺されなかったのではありません(笑)
ただワンちゃんがフレームインするとKに殺されるのではないか?と非常にハラハラしてしまいましたね。ただ可愛いだけでなく、物語の緊迫感を高める重要なポジションとも言えるでしょう。
【その②】Kの生い立ちが全ての原因?
凶悪・凶暴などの言葉では片づけられないのがK。常識を逸脱しており、本来人間が持つべき責任能力がまるでありません。相手に対する「悪い」という気持ちもなく、善悪の判断さえついていないように感じます。
歪んだ家庭環境や生い立ちが全ての原因であり、これがなければ恐ろしきシリアル・キラーは誕生していなかったのかもしれません。母や祖母から虐げられ、祖父には体罰。決して同情できる人物ではないのですが、彼が幸せに育っていたら……ついそんなことを考えてしまいますね。
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映画『アングスト/不安』が恐ろしいと言われる理由
上映禁止、お蔵入りの作品、聞くだけで恐ろしさ満点の『アングスト/不安』。一体どんな点が恐ろしいのでしょうか?鑑賞する前に注目すべきチェックポイントをぜひ確認しておきましょう。
恐ろしいポイント①Kの理解できぬ行動
やはり一番恐ろしいのは理解不能なKの行動です。いくら家庭環境が悪いからといって、想像の斜め上を行き過ぎていて頭が追い付かないことでしょう。白鳥の首を斬って血を飲む、47歳と付き合ってSM行為をはたらく、実母を刺してそのまま逃亡する……などなど。とんだホラー映画よりも恐ろしい要素が満載です。
ただ生い立ちがかつての行動が奇妙なだけでなく、娘を殺した後、白鳥の時と同じ行為を繰り返しているんですよね……。殺害シーンこそ画面は暗めですが、狂ったように首筋へかぶりつく姿に、筆者も生理的嫌悪感を覚えました。彼にはこれと言った理由がない、ただ殺したいから殺すのですが、それこそが最大の狂気です。別に血が飲みたいわけでもないんですよね。
ただこれ!という理由こそないけれど、被害者と自身の家族を無意識のうちに重ね合わせているのが怖いところ。まるで家族に復讐するかのように、見知らぬ一家を拷問、恐怖へと陥れるのです。Kの行動は全ての物事に反発している、観ているうちにそんな風に思えてしまいます。
ですがそれは人間としての大きな道を外れていることは間違いありません。だから理解が出来ず、言葉にはあらわせない気持ち悪さ、恐ろしさを覚えるのかもしれませんね。
恐ろしいポイント②カメラワークの技術で恐怖度アップ
『アングスト/不安』は80年代、今から約40年近く前の作品です。現在ほど撮影手法も豊富な時代ではありませんでした。けれども本作は上から、時にKの目線になって……など、細やかなカメラワークで物語を展開していきます。特に事件の最中はK目線であることも多く、臨場感たっぷりで描いていますよね。
ただ延々と引きで様子を映すだけでもつまらない、細部まで気を遣ったカメラワークがより作品の恐怖度を盛り上げます。まるで鑑賞者も一緒に屋敷内にいるような感覚に陥る、そんなリアルさがあるのです。
恐ろしいポイント③殺戮描写をハッキリ描かない部分が逆にコワイ
「SAW」シリーズや「ホステル」「武器人間」など、観ていてイタタ!となるほど、ショッキングなシーンをありありと描く映画が増えました。これは諸々の技術が発展したこともあり、80年代ではまだ実現不可能だったことです。
『アングスト/不安』も殺害シーンはあまりハッキリと描かれておらず、“娘の刺殺もあくまで暗く”という感じになっています。ラストのトランクのシーンも、決して死体を鑑賞者へ見せることはありませんでした。
けれどもこの「あえて見えない」のがより想像力を働かせるから怖いのです。暗い通路でのメッタ刺し→血を飲むところも分かりづらいはずなのですが、よく見えないからこそ気持ち悪いのです。筆者も最初は「あれ?抱きついてるの?」と勘違いしてしまうほどでした(笑)
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まとめ
『アングスト/不安』は“問題作”の一言で片づけてはならない映画だと思います。観ているうちに世界へ引き込まれ、シリアルキラーについて深く考えてしまう作品ではないでしょうか。心霊が出るわけでも、激しい残虐描写があるわけでもありません。
けれどもKという人物にひきこまれる世界観が本当にスゴいのです。賛否両論あるかとは思いますが、この作品を観てどんな感想を抱くかはその人次第。あなたはK、いや、ヴェルナーにどんな思いを抱きましたか?
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