映画『LAMB ラム』のネタバレ考察!父親の正体とは?話題作を徹底解説
女性が可愛らしい羊を抱いたビジュアル・ポスターが印象的な『LAMB/ラム』。
広大な土地に羊、大自然の恵みを感じられるほのぼのストーリーではなく、本作は不穏な空気が延々と流れるホラー映画です。
羊飼いの夫婦とある日突然生まれ落ちた“不思議な羊の子”アダ。
2人の変わらない毎日を一変させた幼き子はたくさんの愛情を注がれるものの、物語は思いもよらぬ方向へと向かっていくのです……。
神話をベースに話が進み、片時も目が離せない展開は必見。鑑賞後は何とも言えぬ余韻に浸れる味わい深いホラーと言えるでしょう。
アダと夫婦の奇妙な生活に不思議な絵面。この作品はB級なのだろうか?それとも……?
ちょっぴりシュールで心がザワつく『LAMB/ラム』をネタバレありで解説していきますよ!
目次
映画『LAMB/ラム』について
アイスランド・スウェーデン・ポーランドと3か国合同制作の『LAMB/ラム』。第94回アカデミー賞国際長編部門アイスランド代表作品に選出され、瞬く間に話題を呼びました。
あまりの評価の高さに公開を心待ちにしている人は多かったのでしょう。
アメリカでは「A24」が北米配給権を見事に獲得。堂々とスクリーンへ登場し、存在感の大きさを見せつけました。
ちなみにA24とは『ヘレディタリー/継承』や『ミッドサマー』、『ザ・ライトハウス』、『イット・カムズ・アット・ナイト』とパワフルかつ完成度の高い作品を輩出する制作・配給会社です。
監督はアイスランドで活躍するヴァルディマル・ヨハンソン。本作の脚本も担当しています。
2003年にショートフィルムを発表して以来、様々な形で映画作りに携わっている人物。
『LAMB/ラム』は自身初となる長編作品であり、第74回カンヌ国際映画祭ある視点でオリジナリティ賞を、2021年開催のシッチェス・カタロニア国際映画祭では最優秀作品賞として素晴らしい成績を納めました。
制作総指揮官は主演を務めたノオミ・ラパス。
力強いタッグでこの世に発表された『LAMB/ラム』は優秀な結果を残しただけでなく、多くの人々に愛される映画となったのです。
10秒で分かる!映画『LAMB/ラム』の簡単なあらすじ
マリア(ノオミ・ラパス)とイングヴァル(ヒルミル・スナイル・グドゥナソン)田舎で静かに暮らす羊飼いの夫婦。
今年は事業が上り調子のようで、羊の出産ラッシュが相次ぐ日々でした。
ある日、一頭の羊から変わった子供が生まれます。半分人間・半分羊の獣人の出産に立ち会ってしまうのです。
驚きの出来事に戸惑うものの子羊は愛らしく、2人はベビーベッドに寝かせ「アダ」と名付けて愛情を注ぎました。
アダの真の親である羊は、度々夫婦が暮らす家の周りをうろつきます。すっかり愛着が湧いたマリアは母羊の行動を鬱陶しく思い、強い言葉で追い払うなど行動が過激化する一方。
そして楽しい時間も束の間、静かな田舎にイングヴァルの弟・ペートゥルが来訪。彼はアダの姿を奇妙に思い夫婦へ苦言を呈します。
時間の経過とともに田舎で起きた小さな幸せは、徐々に崩壊を加速させていき……。
映画『LAMB/ラム』のネタバレあらすじ
ここからは映画『LAMB/ラム』のネタバレを含みながらあらすじを紹介します。
物語の核心に触れているため、観鑑賞の方はご注意ください。
【あらすじ①】生まれ落ちた羊と人間の子
吹雪が吹き荒れるクリスマスの夜。とある田舎の羊小屋では、家畜たちが落ち着かない様子を見せていた。
荒い息遣いをした“何者”かが小屋に侵入し、何匹かの羊たちは勢いで逃げていく。
しかし、一頭だけが柵の中に入れず倒れこんでしまった。羊たちは“何か”がやってくる気配を警戒し、嵐が過ぎ去るのを待つ……。
翌朝、何事もなかったかのように家畜を世話するマリア(ノオミ・ラパス)とイングヴァル(ヒルミル・スナイル・グドゥナソン)。
2人は夫婦であり、牧羊を営みながら暮らしていた。裕福とは言い難いが自由で静かな生活。夫婦仲も良く、現在の生活には概ね満足しているようだ。
羊たちの出産ラッシュもあり、今年は事業も順調な様子。ある日子どもを取り上げると羊×人間の獣人が誕生し、夫婦は激しく戸惑う。
顔を見合わせて言葉を失うも見捨てるわけにはいかない。マリアは生まれたばかりの子羊をタオルに包み、自宅へと連れ帰った。
産湯に浸け、ベビーベッドへ寝かせると徐々に愛着が湧いてくる。
2人の間にはかつてアダという名の娘がおり、子どもを亡くした悲しみを未だ乗り越えられていない。
彼らにとって獣人の子の誕生は、自分たちの元に娘が戻ってきたような感覚。子羊に娘と全く同じ名前をつけ、まるで人間の子供のように可愛がった。
寝室にはマリア、イングヴァル、そしてアダ。静かで少し寂し気な日常が、“第二のアダ”によって少しずつ彩られていくのだった。
【あらすじ②】母羊の存在
たくさんの愛情を受けたアダは順調に成長していた。ずっと欲しがっていた幸せを手にし、幸福感に満ち溢れる2人。
だがそんな生活に水を差すかのように、アダの真の親である母羊が夫婦の周りを執拗にうろつくのだ。
小屋から出ては子どもを呼び戻すかのように鳴き声を上げる。追い払っても度々現れる母羊にマリアは苛立ちを覚えていた。
そしてある日家からアダが家から消えてしまう。焦った2人は必死になって探すと、そこには母羊とアダが大自然の中で佇む姿を発見。
マリアはすぐさま母親からアダを引き剥がし、強い言葉で追い払う。それでも真の親は去っていく彼らの様子をじっと見つめている……。
季節は過ぎて、春。アダはさらに成長し、子ども用の服を着られるほどに体が大きくなっていた。
幸せな生活が続く中、ある一人の訪問者が現れる。イングヴァルの弟・ペートゥルは少々ワケありのようで、しばらく夫婦宅で暮らすことに。
【あらすじ③】アダへの不思議な愛着
マリアは夜中、数々の羊に怪しげな目つきで視線を注がれる悪夢を見た。うなされて起きると外からは例の母羊の鳴き声が聞こえる。
またもアダを連れ戻しに来たのか、と怒りが頂点に達したマリアはためらいもなく母親を銃殺。
何事もなかったかのように土へ埋め、家へ帰る彼女の一部始終をペートゥルは目の当たりにしてしまう……。
朝、遠方からやってきたペートゥルを歓迎するべく料理をふるまうマリア。しかし、紹介されたアダの存在を彼は気味悪く思っていた。
羊の存在に納得がいかずモヤついた気持ちを抱えるものの、イングヴァルからは「何も言わないほしい」と言われてしまう。
ペートゥルはマリアとアダの入浴を覗いており、その時アダが獣人であることを知ったのだ。マリアへ苦言を呈するが、自分の娘のことを批判され第三者の言葉を鬱陶しく感じる。
ある時ペートゥルは倉庫にしまわれたドラムを発見した。懐かしんで叩くと興味を持ったアダが近づいてくる。
彼は半分面白がったのか、アダへ野草を差し出すた、何のためらいもなく口にする姿は完全に羊そのもの。
2人の様子を見てイングヴァルは激怒するが、「これは人間じゃない羊だ」と反発され気まずい雰囲気に。
挙句、果てにペートゥルは翌朝アダの射殺を試みるが、引き金を引けずに部屋へ連れ帰ってしまう。
起きてアダの姿が見えないことに慌てるマリア。しかし、大切な娘はペートゥルの腕の中でスヤスヤと眠っていた。
【あらすじ④】再び現れた謎の生物
愛らしさに心を奪われたのか、すっかりペートゥルはアダを人間扱い。
この前の態度が嘘のような可愛がり方をし、敷地内を共に行動するなど距離を縮めていく。
身内にもアダの存在を認めてもらいホッとした夫婦は愛情も再熱。ペートゥルと娘が出掛けている間にベッドで愛し合った。
その日の昼4人はリビングにてスポーツ観戦。大人たちが酒が入って大騒ぎしている最中に、アダは外へと出ていった。
すると夫婦の飼い犬が何者かに向かって激しく吠えている。突如現れた謎の存在は犬を殺してしまい、アダは恐怖でイングヴァルにしがみついく。
けれども言葉が話せないため何が起きたかを伝えられず……。酔いつぶれた彼は寝てしまい、アダも腕の中で怯えることしかできなかった。
一方でイングヴァルが眠りについたのをいいことに、マリアを誘惑するペートゥル。
マリアは頑なに拒否するが母羊の殺害を見られていたため、そのネタをエサに彼は脅迫。
大切な夫と娘に知られては困るものの、彼女は序盤からペートゥルの存在を鬱陶しく思っていた。誘いに乗ったフリをして、彼を物置に閉じ込めてしまう。
【あらすじ⑤】手からすり抜ける幸せ
翌日、閉じ込めたペートゥルを解放したマリアは荷物を持たせ、お金を渡して彼をバス停まで見送った。
二度とここへ現れぬように忠告するマリア。快い形の見送りではなく、「追い出し」といった状態で身内と別れを告げることとなる。
その頃イングヴァルとアダは2人で散歩をしていた。ペートゥルが道中で放置した壊れたトラクターを見に行かねばならない。
平穏が日々が戻ってきたと安心したのも束の間、突如現れた大きな獣人にイングヴァルは撃たれてしまう。
頭のみが羊。体が人間のアダに限りなく近い姿をした獣人……。
イングヴァルは最後の力を振り絞ってアダの手を握るが、獣人はアダを連れてどこかへ去ってしまう。
アダも後ろを振り返り不安な表情を浮かべるが、父の元へ戻ることなく消えていった。
銃声に気付いたマリアは音のする方へ向かい、瀕死状態のイングヴァルを発見。
状況が掴めずアダもいない。遂に目の前にいる夫は息を引き取り、何もかもを失った彼女はパニック状態に陥る。
幸せな日々が消え一人ぼっちになったマリア。薄暗い空を茫然と見上げながら、絶望でひたすら立ち尽くすことしかできなかった。
映画『LAMB/ラム』の登場人物・キャスト
本作は平凡な夫婦と不思議な生き物のアダ、そして少々正確に難ありなペートゥルの4人で展開されます。
それぞれのキャラクターや演者について細かく見ていきましょう。
マリア/ノオミ・ラパス
アイスランドの田舎町で暮らすマリア。毎日平凡な日々には満足しているようですが、彼女はいつもどこか寂し気な雰囲気を纏っています。
夫婦仲は良いものの、娘を失った悲しみが未だ癒えていないのでしょう。
いつどんな理由で“一人目のアダ”を亡くしたのかは分かりませんが、愛するイングヴァルとの間には少しのわだかまりがあるようにも感じました。
獣人のアダが誕生してからは、かつての娘と重ねて大きな愛を注ぎます。
母羊を殺す、ペートゥルに強く反発するなど過激な行為も見られましたが、マリアはもう何も失いたくなかったのでしょう。
結局アダとの暮らしは長続きせず、夫も亡くし、「失いたくない」気持ちが裏目に出てしまいました。けれども、もし自分が彼女の立場だったら?そんなことを深く考えてしまうキャラクターです。
マリアを演じるのは本作の制作総指揮官を務めるノオミ・ラパス。
五ヶ国語を操る女優であり、映画『ミレニアム』シリーズの出演によって大きな飛躍を遂げました。代表作は『パッション』や『ブライト』など。現在もスクリーンを中心に活動中です。
イングヴァル/ヒルミル・スナイル・グドゥナソン
マリアと共に牧羊を営むイングヴァル。穏やかで落ち着いた性格をしており、弟のペートゥルとはかなり対照的かも……(笑)
アダの存在には戸惑いつつも娘を亡くした悲しみは妻と同じ。マリアがアダをあやす姿を見て陰で涙を流すなど、彼もまた癒えない傷を抱えていたのです。
ですが、マリアよりも少し現実的だったイングヴァル。悲しみを抱えつつも前へ進み、ペートゥルからの指摘に対し、多少の覚悟はあったかのような様子を見せていました。
アダと手を繋いで歩く姿はとても微笑ましいものがありましたが、幸せを噛み締める最中に死亡。楽しい生活は続かず命を落とし、彼の人生はあっけなく幕を閉じてしまったのです……。
イングヴァルを演じるのはヒルミル・スナイル・グドゥナソン。アイスランドで活躍する俳優で、母国では超大人気!1995年のデビュー以来エッダ賞やグリマ賞など数々の好成績を納めています。
アダ
片手が羊、もう片方は人間の手。そして成長するにつれて二足歩行に。観る人によっては不気味or可愛らしい獣人のアダ。
性別ははっきりと明言されていませんが、みんなが娘扱いをしていたので一応女の子と言うことで……(笑)
アダは夫婦にわざと不幸をもたらす負の存在ではありません。彼女自身は2人になつき、まるで本当の子どものように生活をしていました。
言葉こそ話せませんが、つい人間がメロメロになってしまうほどの愛くるしさがあるのです。
人間でもなくただの羊でもない、とても不思議な存在。
そのアンバランスさが人の心を惹きつけるのですが人間との共存は難しく、育ての親と引き離され、本来自分があるべき世界へと帰っていくのです。
ペートゥル/ビョルン・フリーヌル・ハラルドソン
ワケありな様子で夫婦宅を訪れたペートゥル。アダを殺害しようとする、マリアに迫るなど最悪な行動が多く、あまりお金もない様子です。
一言で表せばただのクズキャラなのですが、アダの愛らしさに根負けし、結局受け入れてしまうあたりに妙な素直さを感じました。突然孫にメロメロになる叔父さんのようですね(笑)
ですが元からマリアを狙っており、“優しい叔父さん”像からかけ離れた言動を繰り返します。欲望を露にしたことが仇となり、家を追い出されてしまいました。
その後のイングヴァルについては描かれていません。何かの拍子に一人になったマリアのことを知るのか、それとも永遠に疎遠のままなのか……。色々なことを考えてしまいます。
イングヴァルを演じるのはビョルン・フリーヌル・ハラルドソン。母国のアイスランドで俳優兼監督として活躍中。
2002年のスクリーンデビュー以来、コンスタントに活動を続けています。
映画『LAMB/ラム』の疑問を徹底解説!
「なぜアダは生まれたの?」「わざわざ母羊を殺したのはなぜ?」と、気になる部分が非常に多い『LAMB/ラム』。
アダ誕生のいきさつやラストシーンの意味などを解説します。
本作のモチーフは何?
羊と人間、扱われているネタだけを見ればちょっぴりB級チックかもしれないですね。
けれどもストーリーのベースとなっているのは、恐らくキリスト教。そう考えられるには『LAMB/ラム』に以下の要素があるからです。
- ストーリーの始まりがキリスト教が誕生したクリスマスイヴ
- イエス・キリストを表現する言葉の一つに「神の子羊」というものがある
- 異教の神、バフォメットという山羊×人間の悪魔の存在
- 主人公の名前が「マリア」(聖母マリアから取った可能性)
③については後述しますが、これらを見ると宗教からヒントを得ていることがよくわかるかと思います。
何の意味もなく獣人が現れ、夫婦の平穏な日々を奪い去っていくだけの物語ではありません。
アダはどうやって生まれたのか
なんとなく鑑賞しているとアダが急に現れたような気もしますが、冒頭部分に注目です。
時はクリスマス、ひどい吹雪の中羊たちがザワザワと落ち着かない様子を見せていましたよね。
そして登場する謎の存在と、柵の外に取り残された一匹の羊……。この時の“謎の存在”とは、終盤に登場する獣人、つまりアダの本当のパパです。
恐らく母となった羊と真の父親が交尾し、子どもを孕んだという推測ができます。獣人と動物の子ですからアダのような存在が生まれるのは容易に考えられるでしょう。
ラストシーンに出てくるあの存在は、すでに序盤で登場していたということです。
マリアが母羊を殺した理由
マリアは何のためらいもなくアダの真の母親を殺しました。あの冷酷なシーンにはゾッとするものがありましたね。
「わざわざ殺す必要があったのか?」と思うかもしれませんが、マリアは娘の一件により失うことの悲しみを誰よりも知っています。
だからこそ、自分たちの元へやってきた神からの贈り物を手放したくはなかったのでしょう。
行き過ぎた愛と言ってしまえばそれまでですが深い傷を負った人間からすれば、二度同じことを繰り返したくはありません。
娘とアダ(羊)への想いが交差し、感情が膨らんだ結果あのような行動へ至ったのです。
マリアとペートゥル、2人の関係は……
バスタイムを長々と覗き、兄が酔い潰れているのをいいことに関係を迫ったクズキャラのペートゥル。
かなり困ったタイプの人間ですが、マリアも不思議なことに彼を強く突っぱねません。これには少し違和感を覚えた方も多いのではないでしょうか?
マリアを観ているとあまり押しに弱そうな性格ではなさそうです。
むしろ頼もしそうな感じさえするので、夫の親族だから断れない……というよりかは、元から2人の間にはやましい事情が絡んでいたのかも。
ペートゥルはお金や仕事に困っていそうですし、素行だけを見れば完全にクズです。
いくら身内でも怪しげな人を家に入れたくないですよね。最後にお金を握らせるのも「そこまでしてあげる?」と筆者は思ってしまいました。
あくまで憶測ですが、マリアとペートゥルは誰にも言えない関係を結んでいた可能性が考えられます。
アダの真のパパ、あの正体は「バフォメット」?
『LAMB/ラム』のモチーフがキリスト教なら、アダの父親の正体は異教の神・バフォメットなのでしょう。
バフォメットとは簡単に言えば悪魔のことで頭部は山羊、首から下は人間とあの父親と全く同じ姿をしています。
ただ見た目が似ているだけではなく、悪魔だと考えられる理由は性別をハッキリと区別できない両性具有な点。
アダも夫婦によって女の子扱いされていましたが、作中では性別について触れられていませんでした。悪魔は不幸をもたらす存在です。
イングヴァルの殺害にアダを夫婦の元から連れ去ってしまったので、マリアの幸せを見事に奪い去っていきました。
なぜイングヴァルは殺された?ラストシーンの意味は?
母羊はアダを取り返すために何度も夫婦の周りをうろつきます。それでもマリアは失う悲しみを恐れ、彼女を殺してしまいました。
イングヴァルの死はまさに因果応報。マリアの行き過ぎた行為は咎められ、罰を与えられてあのような結果になったのでしょう。
そしてバフォメットはアダを取り返しにきたのです。
アダは夫婦にとって本当の子どもではないですからね。真の父・母のもとで子どもが暮らすのは当然のことですから、彼がやってくるのも納得がいくはず。
何もかもを失ったマリアは空を見上げて呆然としますが、泣き崩れるだけではありません。
「最初から分かっていたのだ」と少しの理解を示しているような様子さえ伺えます。
彼女も悪人ではないですから自分の行いを理解し、アダと生涯を共にすることができない現実が見えていたのかもしれないですね。
『LAMB/ラム』の見どころはキャラクターの繊細な心情にアリ
アダちゃんについて
本作にはたくさんの動物たちが登場しますが、彼らが何を考えているのか観客のみなさんに読み取ってもらいたいと思ってアダのセリフを無くしました。#LAMB pic.twitter.com/zSXitVDLKQ
— 映画『LAMB/ラム』公式|3.3Blu-ray&DVD発売 (@LAMBMOVIE_JP) November 28, 2022
(2022年11月、監督とアダがアイスランドから来日していました!)
目を奪われるような大自然にアダの可愛さ、不気味で奇妙な雰囲気など『LAMB/ラム』の見どころは挙げればキリがありません。
ただ一つイチオシポイントを挙げるなら、登場キャラクターの繊細な心情ではないでしょうか。
マリアもイングヴァルも過去の悲しみを抱えながら生きています。
イングヴァルは何とか前を向こうとしていますが、マリアは過去に囚われており未だ気持ちを入れ替えることができていません。
複雑な想いを胸に持った中でアダが誕生。真の親から引き離してまで共に暮らしたい、それでも自分たちの行いが良くないこと、アダとは一生続かない関係とは分かっている……。
揺れ動くそれぞれの心と行動の繊細さは、視聴者がつい感情移入してしまう部分だと思います。
ペートゥルも人間性に難があるものの、何だかんだで心優しい人物。
アダを撃てなかったのも彼女が良くない存在と理解していながら、夫婦の幸せを完全に奪えなかったから。
セリフがとても映画ではないので役者の表情や行動、画で胸の内や感情を読み取れる、丁寧な作り込みがされた作品です。
この繊細な気持ちが絡むからこそストーリーがより味わい深いものとなり、余韻を残す映画となっているのでしょう。
鑑賞の際はぜひ、それぞれのキャラクターに注目してくださいね。
まとめ
キリスト教がベースとなったストーリーの『LAMB/ラム』。
宗教がテーマにあると難しい内容だと思いがちですが、本作は複雑すぎず、綺麗にまとまっているので観る人を選びません。
アダの可愛さもあってか(?)ホラー要素が薄く感じ、内容もスッと受け入れやすいので、あまりホラー映画を見慣れない方にもおすすめです。
素晴らしい大自然と奇妙な生活、キャラクターの心の動きを味わいながらご鑑賞ください!
関連記事
- 【2021年】アカデミー賞連発!大注目の配給会社「A24」おすすめ映画20選
- 【2023年最新】ホラーの宝庫!アマゾンプライムのおすすめホラー映画15選!
- 【ネタバレ考察】『ミッドサマー』のあらすじ&伏線を徹底解説!映画の舞台はまさかの日本…?
- これを読めば理解が深まる!映画『ザ・ライトハウス』のあらすじをネタバレ解説