嘘をつけない男 ”井筒和幸” 監督のおすすめ映画7選!
「パッチギ!」や「のど自慢」が代表作の井筒和幸監督。激しいバイオレンス映画の印象が強いですが、他にも幅広いジャンルの作品を世に送り出し、人気を集めています!
そんな井筒和幸監督は奈良県出身、1952年12月13日生まれのA型です。高校時代から8ミリ、16ミリの映画を製作していて、1975年には友人と共に映画製作グループ「新英倶楽部」を立ち上げます。同年に、ピンク映画で監督デビューを果たした後、1981年に初めて一般映画「ガキ帝国」を発表しました。この映画で日本映画監督協会新人奨励賞を受賞しています。その後は、映画監督だけでなく、テレビやラジオ、映画評論や、政治論評など多方面での活躍をしています。
カーアクションや爆発などのアクション撮影をするときは「CGアニメに頼っていたらダメだ。ライブでやらないと役者の顔に緊張感がでない」と語る井筒和幸監督。本物、フィルムの質感に徹底的にこだわる監督の作品を、公開年度順にご紹介していきます!
1.ガキ帝国
出典:Amazon.com
あらすじ
舞台は万博を3年後に控えた大阪。少年院から出所した不良少年のリュウ(島田紳助)は、仲間のチャボ(松本竜介)とケン(趙方豪)と再会する。リュウは、少年院で出会った不良少年・コウ(升毅)を連れていたが、コウはチャボとケンと険悪なムードになり、帰ってしまう。その頃、大阪は二つの大きな不良グループ北神同盟と、ホープに分かれていたのだが、コウは北神同盟の会長まで成り上がる。リュウはホープの会長を倒して、ピース会と改名し、会長となる。
お互いが組織の会長になったリュウとコウは対立しあうーー。
ココがスゴい!「ガキ帝国」井筒和幸監督の撮影裏話
・井筒和幸監督初の一般映画で出世作です。続編に「ガキ帝国 悪たれ戦争」があります。
・本作の制作に使える金額はわずか500万円だったので、撮影の許可申請などをせずに、人目を盗み、警察から逃げながら撮影したそうです。
・井筒和幸監督は「高校を出てしばらくはミナミで遊んでいた」と言っているので、本作もその経験から制作されたんだと思います。
絶対見逃せない!この映画の見どころ!
喧嘩し続ける不良少年たちの姿が見どころです。普段の生活じゃありえない展開と、リアルな様子が絶妙のバランスを保っています。とにかく喧嘩のシーンが多く(10分に1回くらい)当時の不良の激しさが表現されていますが、現実でもありえそうと思わせてきます。
「処女作には作家のすべてが詰まる」といいますが、これからの作品の匂いがプンプンする映画でした。
2.二代目はクリスチャン
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あらすじ
兵庫県神戸市の六甲山にある聖サフラン協会のシスターである今日子(志穂美悦子)は端正な美しさの持ち主であった。天竜組の二代目・天竜晴彦(岩城滉一)は今日子に惚れ込んでいた。
同様に、刑事の神代(柄本明)も今日子に想いを寄せていた。しかし、今日子は、ある嵐の日に運命的に出会った英二(北大路欣也)のことを想っていた。周囲の人びとの想いが交差するなかで、今日子の運命は想いもよらない方向へ進み始めるのであった。
ココがスゴい!「二代目はクリスチャン」井筒和幸監督の撮影裏話
・本作は2部構成になっていて、前半はラブコメディ、後半はヤクザ映画です。すさまじい展開でストーリーが進んでいきます。
・原作はつかこうへいの長編小説です。脚本もつかこうへいが担当したのですが、舞台向きであったので映画向きに修正されました。つかこうへいは、自分で書いた脚本が修正されたことに不満を露にしたそうです。
・キャストがとても豪華です。現代とは一味違う80年代の役者たちの演技が楽しめます!
絶対見逃せない!この映画の見どころ!
物語の勢いと役者の演技力がみどころです!本作には邦画にありがちな、小難しい要素はなく、鑑賞者に考える暇を与えないほどの勢いがあります。また、その勢いを支える役者の演技力により、身を委ねて見ているだけで、楽しめる作品になっています。
3.宇宙の法則
あらすじ
機屋である父・正蔵(常田富士男)と対立し、故郷を出た良明(古尾谷雅人)は、一流のデザイナーとして成功した。しかし、正蔵の急死を受け実家に戻ることを決意する。そこで良明は、兄・一也(長塚京三)と後継ぎのことで口論し、デザイナーのプライドを捨てて、故郷に戻る決意をする。
東京に住んでいる恋人の令子は、良明の身勝手な行動に不満を抱き抗議するが、彼を止めることはできなかった。故郷で機屋として成功しようと努力する正蔵に数々の困難が降りかかるーー。
ココがスゴい!「宇宙の法則」井筒和幸監督の撮影裏話
・タイトルから推測すると、SFドラマと思ってしまいますが、青春ドラマです。
・本作は世界で初めて、外の風景が綺麗に撮れる「デイライトフィルム」で撮られました。光と影が自然に表現されています。
・井筒和幸が著者の本もあります。両方見たいという方は参考にしてください。
絶対見逃せない!この映画の見どころ!
主人公・良明の苦悩が見どころです。「若者の苦悩」を描いた作品は、井筒和幸監督の得意分野です。本作も存分に描かれているのですが、どんなに頑張っても不幸がやってくることを ”宇宙の法則” と示唆しているんだと思います。
4.のど自慢
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あらすじ
日曜のお昼に放送される国民的音楽番組 “のど自慢”。そんな晴れ舞台への出演を求めた色いろな人間模様を笑いあり、涙ありで描いた人情喜劇。のど自慢が群馬県にやって来た。予選会場には様々な思いを抱いた人々が集まる。
売れない演歌歌手・赤城麗子(室井滋)は自信を取り戻すために。何もうまくいかない荒木圭介(大友康平)は唯一の特技である歌を披露するべく。女子高生の高橋里香(伊藤歩)は家族への想いを伝えるためにーーー。
ココがスゴい!「のど自慢」井筒和幸監督の撮影裏話
・「また会う日まで」や「上を向いて歩こう」など、名曲がたくさん歌われるので、ついつい口ずさみたくなります。
・主役が3人いて、オムニバス形式でストーリーが展開します。それぞれのストーリーが感動的なんですが、ラストは1つにまとめる構成になっていて、井筒和幸監督の映画を製作する上手さが感じられます。
・北村和夫と、その息子である北村有起哉が共演しています。親子での共演は珍しいので、ご存知の方は確認してみてください!
絶対見逃せない!この映画の見どころ!
のど自慢に出演する人々の心情の変化が見どころです!ただ歌が上手い人が歌い、視聴者がそれを聞くという構図ではなく、歌にこめられた想いや、出演することになった背景を感じることが出来ます。
井筒和幸監督はこのような物事の背景や、裏側であった物語にフォーカスを当てることが上手いです。
本作は、歌を通じた人間味溢れる作品になっていて、見終わった後「明日もがんばろう」と思います。心温まる作品をお探しの方はぜひ鑑賞してください。
5.パッチギ!
あらすじ
舞台は1968年の京都。府立東高校の2年生・松山康介(塩谷瞬)は、朝鮮高校へサッカーの練習試合を申し込む。練習試合で朝鮮高校に訪れた康介は、音楽室でフルートを吹くキョンジャ(沢尻エリカ)に一目惚れする。
康介は国籍の違いに苦しめられるが、キョンジャのことを想い続け、朝鮮語を勉強する。
ある日、康介はキョンジャが演奏していた曲が「イムジン河」であることを知る。演奏することを決意し、楽器店でギターを購入。そして康介の頑張りは実り、二人は恋に落ちていく。順風満帆に進んでいた二人の恋であったが、大きな壁が立ちはだかるーー。
ココがスゴい!「パッチギ!」井筒和幸監督の撮影裏話
・「パッチギ」は韓国語で頭突きと言う意味です。関西でも使われ、頭突きと、頭にソリコミを入れることを意味します。井筒和幸監督は「当たり前のように韓国語が日常生活で使われるのが関西弁のおもしろいところ」だといいます。
・本作は井筒和幸監督の「学んで、自分の頭で考えて、前進して欲しい」という思いが込められています。
・本作は歴史についてもたくさん触れられるのですが、井筒和幸監督は社会の先生になりたかったらしく、世界史も日本史も詳しいそうです。監督は「歴史を知らない人が映画監督になったらだめだ」といっています。
絶対見逃せない!この映画の見どころ!
本作の見どころは、裏テーマである民族間の相互理解です。ラブコメディに思えますが、朝鮮と日本の関係性が描かれた作品でもあります。日本と、朝鮮、韓国などの現実での関係性は良好とは言えないですよね。いつかお互いが理解しあえる日が来ることを願いましょう。
井筒和幸監督は「本作を北朝鮮や、韓国の人に見て欲しい」と、いいます。暴力的な作品を製作することが多い監督ですが、本心では平和を望む、優しい方です。
6.ヒーローショー
あらすじ
何をしても上手くいかないユウキ(福徳秀介)は先輩である剛志(桜木涼介)から、ヒーローショーの悪役のアルバイトを紹介される。ある日、剛志の彼女をノボル(松永隼)が寝取ったことから、剛志とノボルの二人は、ショーの最中に大怪我を負うほどの喧嘩をする。
しかし、剛志の気が収まることはなく、ユウキを含めた仲間たちを集め、ノボルを痛めつける。これに対して、ノボルは元自衛隊の勇気(後藤淳平)を引き連れて仕返ししにいく。彼らの復讐はエスカレートしていき、ついに殺人事件が起きてしまう…
ココがスゴい!「ヒーローショー」井筒和幸監督の撮影裏話
・主演は演技初挑戦のお笑い芸人 ”ジャルジャル” の二人です。二つの映画祭で賞をとっており、役者としての才能を開花させました。
・井筒和幸監督は本作に「今の社会はヒーローを求めたがるくせに、ちょっとしたことで批判する。それならヒーローなんかいらない」という皮肉をこめています。
・本作は、社会性を伝えるためにあえて、無名の出演者で構成したそうです。井筒和幸監督は「イケメン俳優を起用すると、そちらに気をとられて映画の本質が伝わらない」といいます。
絶対見逃せない!この映画の見どころ!
現実でもありそうなリアルさが見どころです。大阪で起こった集団殺人事件を元にしているんですが、本作をみると、ニュースで報道される事件にはこういった背景があるんだと思わされます。
マスメディアでは端的な説明しかされませんが、人を殺すという感情はそんな簡単ものではありません。裏では本作のようなどろどろの人間ドラマが必ずあると思います。また本作は、復讐が復讐を生むというメッセージが込められています。
初めは小さなことから始まったのに気付けば大事になっていることは現実でも多いと思います。例えば、恋人と小さなことで言い合いになって、大喧嘩になった経験などは、みなさんおありじゃないでしょうか。どちらかが大人になって大事になる前に謝ることが重要だと思います。
7.黄金を抱いて翔べ
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あらすじ
幸田(妻夫木聡)は大学の同級生・北川(浅野忠信)に誘われ、大阪に帰る。幸田の働き口や、住居の世話をする北川。ある日、北川は幸田にある計画を持ちかける。その計画とは、銀行の地下にあるという金塊を盗むというものであった。
そこから二人は必要な仲間を集める。コンピュータ会社に勤めるサラリーマンで、セキュリティのシステムに詳しい野田(桐谷健太)、エレベーターの作業員をしていた、じいちゃん(西田敏行)。また、幸田の知り合いで爆弾魔の桃太朗ことモモ(チャンミン)も候補に挙がる。着実に仲間を集めていくが、ある日、北川と野田の電話を北川の弟である春樹(溝端淳平)に聞かれ、計画がばれてしまうーー。
ココがスゴい!「黄金を抱いて翔べ」井筒和幸監督の撮影裏話
・原作は1990年に出版された作家・高村薫のデビュー作です。
・井筒和幸監督は今まで小説を600冊ほど読んできましたが、大体捨てて、残しているのは3冊ほどらしいです。そのうちの1冊が「黄金を抱いて翔べ」です。
・本作は皮肉で「犯罪映画」と呼ばれていますが、井筒和幸監督は「犯罪映画は男のロマン」といいます。
絶対見逃せない!この映画の見どころ!
本作の見どころは、社会からはずされた男たちの、はいあがろうとする姿です。
本作は、社会の片隅で孤独にもがいている男たちが一攫千金を目指す物語。強盗という、犯罪を目標とするものの、本気で人生を変えようとする姿は参考になるんじゃないでしょうか。井筒和幸監督は「男性にみてもらいたい」といっておりますが、目標に向かってがむしゃらに生きて欲しいというメッセージが隠されていると考えました。
まとめ
以上、井筒和幸監督のオススメ作品を公開年度順にご紹介しました。男臭い作品が多かったですが、そんな激しさの中に、人間の感情を繊細に捉えたシーンを織り込むのが井筒作品です。
テレビ出演も多い監督のこれからの活躍に期待していきましょう!