天才『黒澤清』監督のおすすめ映画とみどころ徹底解説!!
「映画とは、現実でありながら現実でなく、もう一つの現実として語られる物語である」映画について問われた時に、黒沢清さんは答えてました。天才と呼ばれる彼の作品は、本当に素晴らしいものばかりです!
今回は、黒澤監督の大ファンである筆者が今も昔もファンの心を掴んで離さない黒澤明監督のおすすめ映画と、作品毎の魅力をたっぷりとご紹介していきます!
黒澤清監督について
出典:wikipedia
2019年6月に新作「旅のおわり、世界のはじまり」を公開したする黒沢清は1983年「神田川淫乱戦争」まで遡ることができる映画監督界の重鎮です。
彼は1955年7月19日、兵庫県神戸市生まれで高校生のころから自主映画を作り上げました。この頃から映画監督としてのキャリアが始まったようですね。
そんな彼の作品は、「黒沢清節」と表されるようにどれも特徴的です。セリフではなく映像で語るカメラワークは見るものの心をひきつけます。それに加えて非日常が当然として存在し、独特の雰囲気があります。
東京芸術大学の映像研究科、教授としての顔もある黒沢清監督は映画論の公演をよく開かれてるそうです。公演では作者の「意図」が含まれているかどうかで映像と映画の区別をし、昔の名作映画でそのことについて詳しく説明しています。
映画という作品を深く解き明かした、黒沢清さんならではの解釈にビリビリきますよね!
そんな、言うまでもなく天才な黒沢清さんは、今年の6月14日にまたまた新しい作品を発表するそうです。
これを見てチケットを買おうとして買えなかった方は謝ります。なぜなら、すでに私がチケットを一枚抑えているからです。運良く買えた方はこれからの全国ロードショーを一緒に楽しみましょう!!
黒澤清監督のおすすめ映画
お待たせ致しました!それでは早速、黒澤清監督が手掛けた超厳選おすすめ映画をご紹介していきます!みどころをアツく語っていきますので、皆さんしっかりとついてきてくださいね。
1.CURE
出典:Amazon.com
あらすじ
奇妙な殺人事件が立て続けに起こり、一連の加害者はみな捕まるのだが、あるはずの「明確な殺意」がなかった。その連続殺人事件を追う、刑事の高部(役所広司)は精神疾患である妻(中川安奈)を介抱しながらも事件を解明しているが、バイタリティ溢れる姿勢は「こころ」の奥底にあるモノとは真逆であった。そんな中で一連の事件と関連のある記憶喪失の青年・間宮(萩原聖人)に出会った。
自分の名前すらも覚えていない間宮は不思議で魅力的な話術を宿していて、会う人を惑わし、魅了していた。
海岸で間宮と遭遇した、高部はその話術で魅了されるのであった。
知らなきゃ損‼監督・黒沢清と主演・役所広司の裏話
・監督黒沢清がこの映画を作ったその瞬間から、役所広司さん以外考えられなかったという事
・主人公の気持ちについて監督に聞いても、答えてくれないという難解さ
・1シーンを1回のカットで撮っていく、緊張感!(長いシーンをやるときはしびれたそうです)
・撮影現場の雰囲気すらも、独特で重みがある
みどころ
この映画を見て、まず目を奪うのは怪しさ漂わせるカメラの動きでしょう。荒んだ廃屋、切れかけた電球、さらに洗濯物の入っていない洗濯機を回す妻、などセリフよりも映像で語る黒沢節がここにも健在です。
そして単なる映像美では終わらないのが、映画界の巨匠・黒沢清。この映画は「社会における人間」とは何かを我々、見る人に問い掛けるでしょう。
満員電車に揉まれ、残業をこなし、くたびれる毎日を繰り返している人は、社会という観点においては正常に機能し、適切な立場ですが、人間という観点では一体どうなのか考えさせられます。刑事の高部も、社会における自分の立場を確立し、日々正常に働いている。冷静な判断で事件をいくつもこなし、熱気すらも感じる仕事に対する姿勢は社会人として尊敬の念をも覚えますね。
しかし、その心の深淵では、わだかまりを抱えているのだった。うつ病の妻を献身的に支える「夫」という立場、難解な事件をなんなく、こなしていく「刑事」としての立場、社会における全ての立場に「本当の自分」が抑圧されていた高部は、この映画のキーパーソンである記憶喪失の青年・間宮に、その全てから「解放」される。それからの刑事高部は残酷で暴力的であるが、どこかスッキリしています。
社会人としてワイシャツを着ていた高部は解放されてから、普通(当人にとって)の黒シャツを着用する、このコントラストはさすが映画界の巨匠・黒沢清。
そしてラスト、癒やし(CURE)からかけ離れてた内容でやっとタイトル回収を果たすが、ここからが黒沢清の真骨頂、もちろんこの癒やしが何なのか分からないままエンドロールへと進んでいきます。
2.アカルイミライ
出典:Amazon.com
あらすじ
漠然とした不安を抱えて毎日を生きる青年・仁村雄二(オダギリジョー)はふさぎ込んでいた。そんな彼が唯一、心を開けるおしぼり工場の同僚、有田守(浅野忠信)も同じ心境だった。日々苛立ちに満たされている雄二は、守と話したり、部屋にいたりして日常を過ごしている。そして、その部屋には守が大切に育てているクラゲがいるのだった。
いつも眠るとミライの夢を見る雄二はキレイなクラゲからミライを見出すが、そんな最中である事件を皮切りに浅野忠信は雄二の前から姿を消し、大切に育ていたクラゲを雄二に預けるのであった。
のちに事件が守の犯行と知り、面会を重ねるが、そこからすれ違いが始まり、ふとしたきっかけから別れが訪れた。
映画「アカルイミライ」の撮影で魅せる監督裏話‼
・水を飲むシーンの場合、「このシーンで水を飲んでください。あ、いやなら別に飲まなくても平気です」と自由な演技を促す返答
・主人公・雄二について問われた時には「ダーティー・ハリーであり、クリントンイーストウッドである」と返す監督
・あえて、その時新人であったオダギリジョーさんを主人公としてチョイスする巧妙さ!
みどころ
ワタシ的に黒沢清映画を初めて見る方にオススメするのが、この映画「アカルイミライ」です。
黒沢清映画を見慣れたかたは今、画面のまえでウンウン頷いていることでしょう。きっとそうです。何故かと言われれば、登場人物たち、映像、ともにコントラストがはっきりしてるからです。
主人公・雄二は唯一の友、守と同じく漠然とした苛立ち、不安を抱えてます。この苛立ちや不安はもちろん説明できません。しかし「若さ」からのものであることは明らかです。妙にシンパシーを感じた方もいるでしょう。
この若さは社会、上司、世界から反発するのですが、そのコントラストが見事に描かれています。おしぼり工場で上司・藤原(笹野高史)が雄二と守と打ち解けようと、積極的に話しかけるが、疎ましく思われるんです。
ここが一つのポイントです!上司という年上と部下である年下二人というジェネレーションギャップがハッキリと描かれていますね。そして、のちに守は大切に育ていたクラゲを雄二に預けます。このクラゲは雄二にとってキレイな存在であり、アカルイミライの象徴であることが伺えます。しかし、クラゲには毒があります。つまり反社会的なメッセージも含まれているのです。
この2つの視点は見る人によってハッキリ分かれます。ちなみに20代であるワタシは前者です。きっと上司の立場から見た人は後者の視点からでしょう。
3.ドッペルゲンガー
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あらすじ
研究者として10年前に成功を収めた早崎道夫(役所広司)は新しく人工人体の開発をしている。しかし、周囲の期待とは裏腹に行き詰まり、不満が溜まっていき始めた。
その最中で早崎は自分のドッペルゲンガーと遭遇する。このドッペルゲンガーは研究者である内向的で暗い早崎とは異なり、明るく社交的で何よりも自由だった。そんな早崎のドッペルゲンガーは本物の早崎とともに研究を進めることになったのだが。。。
監督の手腕ここに見たり‼黒沢清の舞台裏
・「ドッペルゲンガー」と「アカルイミライ」は同時進行だった!「ドッペルゲンガー」の脚本の打ち合わせをしながら、「アカルイミライ」の撮影をしていた
・「ドッペルゲンガー」は黒沢清の元教え子である、古澤健と共同で進められた
・ドッペルゲンガーと本人という一人二役を務めれるくらい実力のある役所広司を起用するかたわら、映画初出演の永作博美も出演させ両立させたプロデュースっぷり
みどころ
最初に謝らなくてはいけませんが、冒頭に書いたあらすじは完璧なあらすじではありません。というのは、研究者である早崎道夫(役所広司)と弟(鈴木英介)がいる永井由佳(永作博美)が登場しますが、この二人は接点がなく別のストーリが並列進行しているからです。
この技法は黒沢清、同監督の「回路」でも見られ、映画監督としての実力が伺えます。由佳は駐車場から自分の弟である隆志を見つけ、声を掛ける。しかし、帰ったら弟が自宅にいるのを見つけてしまい恐怖を感じました。それに追い打ちをかけるように無視するドッペルゲンガーの弟は不気味でしかないです。この導入、文を見るだけでも怖くなるようにホラー映画というジャンルを確立しようとする意図を感じますよね、普通は。
でも、ここでいい意味で裏切るのが黒沢清ですね。結論からいうと完璧なホラーではありません。
ホラーだけでなく、アクションも含み、考察したくなるラストの問いかけもあり、挑戦的な映画で我々を魅了してきます。
4.トウキョウソナタ
出典:Amazon.com
あらすじ
平凡な家庭の佐々木一家は、全員悩みを抱えていた。
夫の佐々木竜平(香川照之)は会社からクビを切られ、清掃員として働いている。しかし、クビになったことは家族には言えずじまいとなっている。長男の貴(小柳友)はアメリカ軍の兵士になろうと、志願しているが父には反対されている。次男の健二(井上脇海)は学校に支払うお金をピアノ教室へと回していることが父に知られ、口論の末、階段から落ち、入院する。
そして、そんな不幸のさなか佐々木家に強盗(役所広司)が押しかけ、妻の恵(小泉今日子)を誘拐してしまうのだった。
映画「トウキョウソナタ」のスゴすぎエピソード
・カンヌでも上映したのだが、あまりの素晴らしさにスタンディングオベーションが鳴り止まなかったという
・ベテラン俳優、役所広司が強盗という初めての役柄をチョイスした大胆さ!
・重い映画の中でお笑い芸人アンジャッシュ児嶋を起用した二つ目の大胆さ!!(しかも初出演)
みどころ
まず、この映画を見る前に知っておいて欲しいものが二つあります。
作中に流れるドビュッシー「月の光」は「愛した人にささげた」ものということ、父(香川照之)が解雇された背景には小泉・竹中時代の「聖域なき構造改革」があるということです。当時の社会問題を絡めたり、芸術作品であるクラシック音楽をチョイスするあたり、さすが黒沢清さんですね。
そして、この内容ですよ。不幸が不幸を呼んで、悪化する様は目を当てられません。うわーと思いつつ、目が離せないのは黒沢清映画あるあるですね。でも、こんな時代背景もおさえたリアルな映画となっているのですが、みなさん黒沢清の発言を思い出してください。「映画とは、現実であるが現実ではなく、もう一つの現実である」を。
この発言を芯として、映画を作っている黒沢清はしっかりと、リアルな映画にも突拍子もないことだったり、ありえないことを織り交ぜてます。
5.リアル~完全なる首長竜の日~
あらすじ
漫画家の和淳美(綾瀬はるか)は1年前の自殺未遂で今も意識不明のままでいる。その恋人である、藤田浩市(佐藤健)は先端医療技術の存在を知り、”センシング”という相手の意識に入り込み、会話、接触が可能になる技術で助けだそうと試みた。意識の中で、自分の漫画が打ち切り寸前であることから悩んでいる淳美を説得し、開放させようとしているのだが、淳美は自分の漫画にこだわり自信を取り戻そうと、昔に描いた「首長竜」の絵を浩市と探すのであった。
映画「リアル」のリアルな裏話‼
・精神世界を構築するにあたって、一番うまいのは黒沢清監督とプロデューサーたちから直接オファーを受ける
・原作である小説の内容を大胆に変更!(本の文学性を映画へ置き換えるためだとか)
・難解なストーリであるがために20回以上の脚本会議があった
みどころ
現実世界から精神世界へと移るわけですが、こういったストーリーはとても話が組みにくいそうですね。インセプションしかり。しかし、妥協を許さないのが黒沢清です。
徹底した脚本会議を重ねて、みごと完成度の高い作品になっています。もちろん脚本だけ素晴らしいのではなく、映像もです。光の巧妙な使いかたからおどろおどろしい雰囲気の演出まで、こなしていて単なる恋愛モノで終わらず、SF要素、ミステリー要素まで詰め込んでいます。
そして、中盤で判明する驚愕の事実ですよ。詳しくは言えませんが、この手の驚きは大好物です。
さ、ら、に、またまたやってくる、ラストの驚愕の事実(2回目)。このラストは人によって解釈が分かれますが、同じ映画を見た人とそのことについて、語り合うのもいいかもしれません。
6.クリーピー 偽りの隣人
あらすじ
警察を退職した高倉幸一(西島秀俊)は、犯罪心理学を専攻する大学教授として妻の高倉康子(竹内結子)とともに新居で新たな生活を始めた。そんな、ある日に元同僚の野上刑事(東出昌大)から失踪事件の分析を頼まれる。
それと並行して、新居先の隣人・西野(香川照之)と家族ぐるみの交流が始まる。
しかし、普段は良い父親である姿を知っているか、たまにある不気味な言動から高倉は恐ろしさを感じるようになるのだが。
監督・黒沢清の映画「クリーピー偽りの隣人」に対する強き思い‼
・作中に出てくる驚くような死体処理があるが、思いついたのは黒沢清
・西島秀俊さんと香川照之さんを対決させる構図は僕の映画とずっと思っていた
・多くの人に見てもらうために、グロテスク表現を過度な血を出さずに表現
みどころ
この映画の題名はクリーピーですが、日本語では不気味さを表す意味だそうです。
それなら、この映画はクリーピーな人が出てきてクリーピーなことをするんだろうなと無意識に思いますよね。もちろん作中には、クリーピーな人(香川照之)も出てくるんですが、よ~~~く目を凝らしてみてください。登場人物がほとんど、ほんの少し狂っているんです。でもその、ほかの登場人物が少し狂っているのは物語に関係しているということはありません。
このことが見る人に、若干の不信感を与えますが、黒沢清監督は意図していないが、意図があるように見えてしまうシーンがあることに問題はないと考えています。それが偶然であれ故意であれです。
ですが、西野の狂いっぷりは常軌を逸しすぎています。黒沢清監督に出てくる香川照之さんはリアリティがありすぎて、いつもいつも恐ろしいですよね。
7.散歩する侵略者
あらすじ
数日間、行方不明となっていた夫の真治(松田龍平)は妻の鳴海(長澤まさみ)と不仲だった。
しかし、帰ってきた夫は、別人のように様変わりしたことに驚いた。その一方で、町で一家惨殺事件を皮切りに、様々な現象が発生し、不穏な町へと姿を変えた。
そんな町の中で、真治は妻の鳴海に唐突につげた。「地球を侵略しに来た」と。
映画「散歩する侵略者」で完璧に確立した、監督における配役としての実力
・役の「怒り」という感情を単に怒りとして捉えるのだけでなく、どういったものから来るものなのか細かく役者に教える徹底っぷり
・その一方で役と重なる人物をキャスティングした時には「そのままでいてくだい」伝える、監督としての手腕
・こういった監督から、役者がこぞって黒沢映画に出演したくなるそうです。
みどころ
言ってしまうと、映画に出てくる宇宙人は「概念」を奪う能力があります。この概念が奪われて、町が崩壊の一途をたどります。その中で僕が、すごいなと思ったのが「所有権」という概念を奪ったシーンですね。奪う概念がかなり微妙な概念なんですよ。つまり、その概念が奪われて、ものすごく不幸というわけではなく開放されたとも捉えられるわけです。人間は「社会的動物」とアリストテレスは仰っていますが、その事実は幸せでも不幸でもあるということなんですね。
この映画をみて黒沢清ファンのかたはお気づきだと思いますが、「概念を奪う」というテーマは人間とは何かと考えさせられますが、それは同監督のある映画と似たテーマになっています。
言うまでもなく、「CURE」ですね。社会的従属性から解放された人は果たして人なのか。
「CURE」では人でしたが、今作では宇宙人としての立場なので比較しながら考察するのも一つの楽しみ方としてアリですね。
まとめ
一つ一つの作品がとても濃く、紹介としてまとめるのに骨が折れましたが、これで黒沢清監督の魅力が広まってくれると喜ばしい限りです。
さらに2019年には新しい映画も控えているので、予習して臨むのもいいかもしれませんね。私も映画に向けて何作、見直すつもりでいます。(笑)
まだまだ、これからの監督のご活躍を祈って‼