閉じ込められた理由は?鬱映画『[リミット]』のネタバレあらすじ〜ラスト
物語の最初から最後まで棺の中、閉鎖的な息苦しさが痛いほど伝わるスリラー映画『リミット』。理由も分からず棺に閉じ込められた男性が、この状況から抜け出そうともがく姿を描いた作品です。「こんな鬱映画ない」「観れば観るほど胸糞」と口コミでは散々な言われようですが、実はこれ、誉め言葉でもあるんです。
今回は映画『リミット』についてご紹介致します。本記事はネタバレを含みますので、未鑑賞の方はくれぐれもご注意くださいね!!
目次
終始棺の中!息苦しさ満点の『[リミット]』とは?
出典:Amazon.com
本作はスペインで制作された映画であり、同年に日本、アメリカでも公開されました。ワンシチュエーションスリラーの極みとも呼ぶべき作品で、物語の1時間35分棺の中以外のシーンが出てきません!当然カメラに映るのも主人公のみで、外の世界を一切写さない閉鎖感に恐ろしさを覚えた人も多いそう。それにしても冒頭10分はまともなセリフがない&画面がしばらく真っ暗なので、デバイスの故障を疑う人も多いのだとか、、。
2010年にアメリカで行われたナショナル・ボード・オブ・レビュー賞ではトップ10入りを果たし、スペインの映画賞であるゴヤ賞では最優秀脚本賞を受賞。高い評価を受けていることでも有名です。
『リミット』の監督を務めるのはスペインの映画監督ロドリゴ・コルテス。10代のころから短編映画の製作に励み、当時から様々な賞を受賞していた実力派です。ホラー・スリラー映画を得意としており『アパートメント:143』『レッド・ライト』『ダーク・スクール』などが有名ですよね。
息が詰まりそうになるほどの展開、切迫した空気感を作り出すのが非常に上手く、ついつい画面に引き込まれてしまうほど。まだまだ47歳ということで、今後の作品にも期待が寄せられています!
10秒でわかる『[リミット]』の簡単なあらすじ
目が覚めると主人公のポールは暗く狭い”あるところ”にいました。両手は拘束された状態で、口には猿ぐつわ……。なんとかライターの火を灯し辺りを確認すると、自分のいる場所が棺の中だということが発覚します。暴れても棺は開かず、助けが来る気配もありません。何が何だか分かりませんが、とにかく自分が危険な状態にあることだけは分かっていました。
棺の中には自分のモノではない携帯電話が一つ。急を要する事態であるため、救急センターなどあちこちに電話をかけます。しかしまともに取り合ってもらえず、イライラを募らせるポール。妻や知人に電話をしても留守番電話で、思うようにいきません。
棺の中は新しい酸素が入ってこず、息苦しさでいっぱいです。更に謎の携帯電話は充電も残りわずかで、いつまで使えるかもわからない状況。犯人は一体誰なのか、そしてポールは助かるのでしょうか……?
『[リミット]』のネタバレあらすじ
以下、ネタバレとなりますのでご注意ください!
【あらすじ①】目覚めたら棺の中
暗闇の中目を覚ますと、身動きの取りづらい場所にいたポール(ライアン・レイノルズ)。もがきながら必死にライターで明かりを灯すと、自分の今いる場所が棺の中であることに気づいてしまった。両手は拘束され、口には猿ぐつわがあてられている。
慌てたポールは猿ぐつわを外して助けを呼ぶも、外の音は一切聞こえない。拘束されている手をなんとか外し必死に棺を内側から壊そうとするも、失敗に終わる。どうしようもない事態にグッタリしていると、何やら棺の中には携帯電話が置いてあることに気づく。ポール自身の所有物ではなく、画面にはアラビア語が表示されているも、急いで救急センターへ連絡。電話を通じて助けを求めることにした。
彼はアメリカ人でトラックの運転手として働いており、CRT社に勤めている。イラクに行く途中で仲間と襲撃に遭い、自分だけが生き残った旨を説明するのだが、電話口の相手は話を信用しきっていない様子。焦りで冷静さを欠いているポールは勢い余って電話を切ってしまった。
続いて電話を掛けたのは妻・リンダ(サマンサ・マシス)だったが留守番電話に転送されてしまう。携帯電話の充電の残量は半分程度で、あまり無駄遣いができる状況ではない。妻には救援を求めることだけを言い残し、電話を切った。
【あらすじ②】身動きの取れない状況にいら立ちが募る
棺の中は新鮮な酸素が入ってこないために、暑くて息苦しい。息が荒くなってきたポールは呼吸を整えながら、次はFBIへ救援の要請を試みる。先ほど救急センターに申し出た通りに自分の状況を伝えるも、あまりに信憑性に欠けるため、電話口の男性は彼を疑った。挙句の果てには国民番号まで訪ねてくるほどであり、苛立つポール。話は全く進まず、運悪く電波の関係で電話が途切れてしまった。
苛立つ気持ちを抑えながら、次は勤務先であるCRT社へと電話をつなげる。同じように状況を伝えるも、社員が知る緊急用回線の方へかけてくれと言われてしまった。しかしポールはその番号が書かれたメモを、襲撃によって奪われてしまったことを知る。そのことを告げると人事部の人間へ繋げと再びたらい回しをされ、結局うまくいくことはなかった……。
八方塞がりとなってしまい、ポールは一人棺の中で発狂する。早々に絶望と失望が同時に襲い掛かり、どうすることもできないまま叫ぶことしかできなかったのだ。
【あらすじ③】犯人とのやり取り、頼みの綱は……
なんとか精神を落ち着けて、冷静に携帯電話の発信履歴を見つめる。するとポール自身が発信をしていない謎の番号が履歴に残っていることが発覚する。この番号に目を付け、勢いで電話をかけると、その番号は彼を埋めた犯人へと繋がった。
どうやら犯人はポールを兵士だと思い込んでいるらしい。彼の弁解を聞かずに、遂には「身代金500万ドルを9時までに用意しろ」と要求してくる始末。もちろん払えるわけがないと返答すると、犯人は大使館に払わせれば良いなどと無茶苦茶なことを言い出すのだ。一方的な要求だけ出され、通話は終了。何の手がかりもないまま、ポールは再び絶望的な状況へと陥った。
しかしあきらめずに、次は国務省へと電話を掛けた。すると窓口の女性はポールの名前を言い当てたため、彼は不信感が募る。女性曰く今回の事件について国務省に連絡が入ったそうで、ポールのSOSは決して無駄なものではなかったのだ。
代わりに身代金を払うことはできないと断られてしまうものの、女性はテロ対策のプロであるダン(ロバート・パターソン)の番号を教えた。手元にあるペンで棺に電話番号を書き、急いで電話をかけると、ダンは事件について既に把握しているご様子。早くも救出のために行動へ移しているとのことだった。
ダンは不安障害でパニックになるポールに薬を飲むように指示を出し、酸欠にならないように努めろと言う。携帯電話のバッテリーを節約する指示もして、少しの希望が見えてきた。
救出部隊が向かっているさながら、犯人から着信がが入る。身代金は払わないと頑なな姿勢を貫くも、犯人はポールへ人質動画を撮影しろと要求。更には身代金を500万ドルではなく100万ドルに、とまで言い出し、電話口の向こうから焦りが感じられた。
しかし動画を撮影しても、100万ドルを払っても無事が確保されるかは分からない。実際にポールが犯人にそれを聞いても、相手はハッキリと答えることがなかったからだ。
【あらすじ④】ポールは助かるのか?
ポールの足元にはメモ書き、ナイフ、懐中電灯、ライトが潜んでいた。ダンに再び電話をかけて犯人の要求について教えると、ダンは人質動画を撮影するなと止める。この返答にポールは「ダンが表面的なことばかり言うので、自分を助ける気はないのだろう。国同士のトラブルを避けるために撮影を止めているのか」と疑心暗鬼に陥ってしまう。
しかしダンからすればテロ対策のプロ、今まで救出してきた者たちの名前を羅列して、事件には真摯に向き合ってきたと説明する。納得したポールだが焦りは消えず、追い打ちをかけるように犯人からの連絡が入るのだった。
添付された画像には拘束された女性が銃を突きつけられている様子が映し出されている。焦りと不安から、ポールは犯人へと再度電話をかけてしまった。人質動画を撮らなければ女性を殺害するとの一点張りで、ダンの抑止も聞かずに動画を撮影してしまった。
そして立て続けに女性が殺害される動画が送信されてくる。どうやらアメリカ政府がテロリストの要求をのまなかったことから、この女性は犠牲となったらしい。動画を見て吐き気を催すポールはダンへの不信感、そして身の危険をより強く感じるようになっていた……。
ダンを電話で責め立てるも、女性の存在までは把握していなかったと彼は言い切る。そうこうしているうちに、棺の上では爆撃が発生。棺本体が傷つき、隙間から砂が溢れんばかりに侵入してくる危険な状態に。このままでは生き埋めになってしまう、どうにか穴を塞ぎ、一時的にピンチを乗り切った。
すると次はCRT社の人事部からの着信が。希望を持って電話に出ると、ポールを解雇する旨の電話だった。先ほどテロリストに殺害された女性社員はポールと不適切な性的関係があった事実が発覚、当社の規定に反すると判断されてしまったようだ。(CRT社では雇用者間における不適切な性的関係は即時解雇というルールが存在するから)助けるおろか、解雇されてしまったために会社とは縁もゆかりもなくなるポール。絶望に打ち震えて遂に言葉も出なくなっていた……。
入り込む砂の量はどんどん増えていき、息苦しさが増していく。死を覚悟したポールは遺言の動画を撮影し始めた。再び犯人からの着信があり、次は要求をのまなければ家族に手を出すと脅す。冗談だと思うポールだが、犯人はすでに家の住所を突き止めていて、今にも実行に移しそうな切迫感があった。自身の指を切り落とす動画を撮れば、家族は助けてやると言う。気が動転した彼は勢いで指を切り、その様子を動画におさめてしまった。
そしてダンからの電話があり、ポールの居場所を突き止めたという。棺の半分近くが砂に埋もれた状態で「持ちこたえろ」と叫ぶダン、電話越しから地面を掘り起こす音まで聞こえ、一気に希望が見えてきた!おとなしく救出を待つも、なかなか棺は掘り起こされない。
「よし棺が見えたぞ」「早く開けろ!」の声が電話口から聞こえたものの、棺が開く様子はない。なんと救助隊はマーク・ホワイトという人物の棺を掘りあててしまい、ポールの元へたどり着いてはいなかったそう……。「すまない、ポール」と絶望したダンの声を最後に、ポールは砂の中へ埋もれてしまった。
映画『[リミット]』のキャスト
キャスト紹介とはいえ、本作には主要人物が主人公のポールのみ。どんな人なのか、解説していきます!
ポール・コンロイ役:ライアン・レイノルズ
最初から最後まで絶望しかない……スリラー界で最も悲惨な主人公とも呼べるポール・コンロイ。絶望の淵に立たされながらも最後まで諦めずに立ち向かっていく姿は、勇ましいものがありました。「なんでそこで犯人の要求をのむの?」という意見も飛び交いましたが、あの状況で冷静な判断は難しそうな……。ましてや家族の身も危ない、自分自身が助かるかも分からないのなら、藁にも縋る思いで実行してしまうかもしれません。
全編通して一人芝居を続けたのは役者のライアン・レイノルズ。撮影期間中は延々と棺の中にいたと思うと、物凄い役者魂を感じます!『デッドプール』シリーズや『名探偵ピカチュウ』のピカチュウ役、『ウルヴァリン;X-MANZERO』など、有名な作品に次々と出演。演じる役幅も広いので、今後もどんなキャラクターを担当するかとても楽しみですね。
ここが鬱?映画『[リミット]』のモヤモヤポイント
本作は「鬱になる映画」や「真実が分からなくてモヤモヤする」との声も。終始救いのないストーリーに加えて、不可解な設定が多いのも事実です。鑑賞後に皆さんが抱える”モヤモヤ”をピックアップしてみました。
『リミット』のモヤモヤポイント①電話の人々が皆使えない……
助けを求めるために次々と電話をかけてSOSを送るポール。それなのに電話の向こう側の人々はあまり焦っていないというか、やけに冷静で妙な違和感を覚えます。ポールとの温度差を出すための演出とも思われますが、それにしても淡々とし過ぎです。テロ対策のプロ・ダンも頼りがいのある人物かと思えば、テロリストに女性が殺された時も「把握していなかった」とアッサリ。観ているこっちもちょっぴり拍子抜けしてしまうほどです。
挙句の果てにはラスト、棺を間違えてしまったオチ……!これにはポール同様、絶望を感じた人も多いでしょう。筆者も最初は「うわ、皆全然ダメじゃん……!」と思ったのですが(笑)解釈によればこの対応には”ある理由”が潜んでいるのかもしれません。
作中でやたらとマスコミやメディアを気にしたり、国際問題に発展するようなことを避けるような発言が多々見られました。そして「最善を尽くす」などのふわっとした言い返しっぷり……あくまで推測にすぎませんが、はなからこの事件は解決できないと踏んでいた可能性も高いです。
未解決事件であるならFBIなどへのバッシングはとてつもないものでしょうし、国際問題に発展すれば確かに面倒です。モヤモヤポイント③でも後述しますが、お国のウラ側的事情がポール救出へと繋がらなかったのかもしれません。
『リミット』のモヤモヤポイント②なぜポールが狙われた?
残念ながら本作では主人公が狙われた明確な理由が分かりません。似たようなスリラー映画だと『CUBE』や『SAW』が挙げられますが、これらは犯人の意図や閉じ込められた理由が続編にて明確になりますよね。『リミット』は続編もないことから、全ての真実は闇の中ということです。
ポールはただ運が悪いだけの男なのか、はたまた被害に遭うような行いを日ごろからしていたのかも謎。確かに不憫に思いますが、筆者が気になったのは妻や子供以外への態度です。特に知人女性(リンダの姉?)のドナへ「くだばれ!アバズレ!」などと叫ぶ姿には、少々驚いてしまいました。そして殺害された女性と性的関係を結んでいたとは……!あんなに家族を大事にしているのに、そんな事実があったなどと誰も思いませんよね。
もしかするとポール自身は、日ごろの行いが悪いタイプなのかも……?明らかになってはいませんが、最悪の場合は同情の余地もない人物なのかもしれません。
『リミット』のモヤモヤポイント③ラストのマーク・ホワイトとは?
ダンとの電話で「マークホワイトという学生を救出した。彼は今家に帰っている」と言っておきながら、掘り起こされたのは彼の棺。つまりダンの話がポールに安心感を与えるための嘘だったのです。誘拐されたまま彼もまた、救出されていない人間の一人だったのでしょう。
ラストシーンの救助隊の絶望的な態度から読み取るに、マークホワイトの件も未解決事件だったのではないか?ということが考えられます。未解決事件が同時に走っていた、なんてケースも考えられますよね。以上のことからポールに対してもどこか冷静(そっけないとも言う)、話を大きくしたくないためにあのような態度を取っていたのかもしれませんよ。
『[リミット]』のネタバレまとめ
バッドエンドのパンチがよく効いた作品『リミット』。ラストシーンの希望が見えかけた瞬間に突き落とす部分は、ジェットコースターのような迫力を覚えました……。ただ鬱になる映画なのではなく、考えれば考えるほど様々な背景が見えてきます。
約90分の短い映画ではありますが、どんどん見進めてしまうのも魅力の一つ。スリラー好きにはたまりませんので、ぜひ鑑賞してみて下さいね。
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