映画『翔んで埼玉』をネタバレありであらすじ解説|豪華キャストをおさらい!
2019年に邦画界を騒がせた驚きの映画といえば『翔んで埼玉』をおいて他にないでしょう。あまりにも極端に迫害されている埼玉県の姿をコミカルに描いた、「なにそれ!?」というストーリーでありながらも、興行収入は37億円以上にも及ぶ大ヒットとなりました。
その面白さはやはり、埼玉や千葉、群馬など関東圏の地域のあるあるをこれでもかと誇張したその内容。日本人だからこそ楽しめるエンターテイメントであり、熱い支持を受けたことも納得の秀作となっています。
果たして、本作がどういう内容だったのか、改めてそのストーリーやキャラクターを追って、魅力をおさらいしていきましょう!
目次
映画『翔んで埼玉』とは?
『翔んで埼玉』はもともと、少女漫画雑誌・花とゆめの別冊号にて連載されていた、魔夜峰央によるギャグ漫画。原作は1980年代に制作された作品なのですが、30年近い時を経て2019年にこの漫画を原作として、映画『テルマエ・ロマエ』などを手がけた武内英樹監督によって実写映画化されました。
主人公の壇ノ浦百美役には、二階堂ふみ。そしてもう一人の主人公である麻美麗役をGACKTが演じ、伊勢谷友介や加藤諒、京本政樹、竹中直人などなど、その他の多くの邦画で活躍する俳優たちが脇を固めました。
そして、役者陣の豪華さに加えて、埼玉が差別された地域となっているという突飛な内容からも話題となり、映画は大ヒット。興行収入は37億円にも及び、本作で竹内監督は日本アカデミー賞の最優秀監督賞を受賞するなど、大きな結果を残した映画となりました。
10秒で分かる映画『飛んで埼玉』の簡単なあらすじ
菅原家一家は、娘・愛海(島崎遥香)の結納のために東京都内に自動車で向かっていました。そんな、車内のラジオではある都市伝説を題材にしたラジオドラマが流れています。
19XX年、埼玉県民は通行手形がなければ東京都内に入ることができず、迫害を受けていました。そんな中、東京屈指の名門校・白鵬堂学院にアメリカ帰りの転校生である麻実麗(GACKT)がやってきます。生徒会長の壇ノ浦百美(二階堂ふみ)は、最初こそ麻実のことが気に食わなかったものの、次第に彼に惹かれて行くようになります。
しかし、実は麻実の正体は“埼玉解放戦線”のメンバーの一人で、手形制度の撤廃を企てていたのでした。麻実と行動を共にするうちに百美にも、心境の変化が生まれていき、東京と埼玉、さらには千葉をも巻き込む戦いへと発展していきますーー。
映画『翔んで埼玉』のネタバレあらすじ
あらすじ①麻実麗の転入
結納に向けて、東京に向かう菅原家の面々は、車中で埼玉にまつわる都市伝説のラジオを聞いた。
かつて、東京では埼玉県民は迫害を受けており、通行手形がなければ東京に入ることさえできない状態だった。そんな中、東京都知事の息子である壇ノ浦百美(二階堂ふみ)が生徒会長を務める白鵬堂学院に、新たな新入生が入ってくる。アメリカ帰りの帰国子女、麻実麗(GACKT)だ。
彼のその風格から湧き上がる生徒たちの姿が気に障る百美。百美は全校生徒を集め、彼らの前で麗に恥をかかせようと、無茶なパフォーマンスを求めるのだった。しかし麗は軽々とそれをこなし、逆に百美の面子の方を潰してしまう。
狼狽した倒れこみそうになってしまった百美を、抱え込んで運ぶ麗。その先で口づけをされた百美はすっかり麗の虜となってしまうのだった。
あらすじ②明かされるその正体
麗に夢中の百美は、すっかり麗にばかり気にかけてしまうようになってしまう。一方で、麗は怪しい動きを見せ、壇ノ浦家の執事である阿久津翔(伊勢谷友介)に警戒されてしまうのだった。
そんな矢先、百美と麗が街中で行動を共にしていたところ、埼玉警報が聞こえてくる。麗の家政婦が子供にせがまれ街に出てきていたところを見つかってしまったのだ。
家政婦をかばう麗に対して、疑いの目は麗に移っていく。埼玉県のシンボル白子鳩が描かれた草加せんべいを踏めなかったことから、麗が埼玉県民であることがついに発覚してしまうのだった。
家政婦が捕まる隙をついてその場を逃れた百美と麗。一人で行動をしようとする麗に対して、それでも行動を共にしたいという百美。しかし所沢の地名を聞いて、立ちすくんでしまう。
麗を追い行動を共にすることにした百美は茨城を経由して埼玉へ向かう。そして麗の正体を知った東京都知事の壇ノ浦建造(中尾彬)は二人を追う指令を下すのだった。
あらすじ③埼玉へと向かう麗と百美
列車で埼玉を向かおうとする麗と百美は、ヌーの群れのせいで、列車を降りることを強いられる。
村の人たちに運んでもらおうとしたところ、その正体は阿久津翔をはじめとした千葉解放戦線だった。捕らえられてしまった麗と百美。刑罰を今まさに受けようとしていた麗達だったが、それを馬に乗った謎の人物たちに救われる。
気づくとそこは春日部。目覚めた二人を救った人物の正体は、伝説の埼玉県人・埼玉デューク(京本政樹)だった。埼玉デュークは、東京都知事の壇ノ浦建造が、通行手形制度を悪用し、お金を着服していたことを突き止めていた。埼玉デュークはその金の在処を、百美に突き止めて欲しいと求めるのだった。
そんな矢先、百美はサイタマラリアに侵され高熱を出してしまう。倒れる百美を救うべく、血清を手に入れるため埼玉デュークが百美を東京へ運ぶことになり、麗とは別行動を取ることになるのだった。
一方の建造は、阿久津に東京の第三の都市とすることと引き換えに、埼玉解放戦線を仕留めるよう命令を下していた。
あらすじ④ぶつかり合う埼玉と千葉
東京へ向かう埼玉デュークは襲撃を受け、百美は都知事のもとへ送られてしまう。東京の埼玉県民も追い詰められ、千葉解放戦線も埼玉に攻め込んできており、埼玉は窮地に陥る。埼玉デュークが真の父親だと知った麗は、埼玉デューク亡き今、自らが千葉を率いることを決めるのだった。
当初はまとまりきらなかった埼玉解放戦線も、麗の訴えにより統率がとれるようになり、千葉との全面対決に及ぶ。
一方、百美は父の部屋の手がかりから、群馬に父の隠した金があることを発見するのだった。それを訴えかける百美に対して、建造は訴えを握りつぶそうとする。しかし、すでに埼玉と千葉の解放戦線は協力し都庁に集結してた。メディアが注目する中、父の不正を明かすした百美の貢献により、無事東京への通行手形制度は撤廃の兆しが見えてくるのだった。
あらすじ⑤世界へ向けて動いていく埼玉
無事、一件落着を迎えたと思った百美のところへ、実は存命だった埼玉デュークがある計画書を手渡す。それは、「日本埼玉化計画」の計画書だった。すでに埼玉発祥チェーン店や埼玉発祥企業商品が全国に広まっており、すでに埼玉は全国に広まってきていたのだーー。こうして物語を終えたラジオドラマ。スタジオで、それを発信していたのは、実は百美と麗だったのだ。
こうして、都市伝説に関するラジオは終わり、菅原家も結納場所に到着。夫の春翔も実はラジオドラマを聞いており、それに感化された春翔は東京で暮らすのをやめ、春日部に家を建てることに決めてしまうのだった。
それから、数年後。埼玉ポーズで多くの人々が密かに集まる場所があった。彼らの前に現れた人物こそ百美と麗だった。あれから埼玉の良さを広め続けてきた彼らの次なる計画は、「世界埼玉化計画」だったのだーー。
映画『翔んで埼玉』の登場人物
壇ノ浦 百美(だんのうら ももみ)/二階堂ふみ
東京屈指の名門校である白鵬堂学院で生徒会長を務めているのが、壇ノ浦百美(だんのうら ももみ)です。麻実麗と出会うまでは、東京都知事の息子であるが故に高いプライドを持っており、埼玉県民には強い差別意識を持っていました。
しかし、麗に好意を抱いて以降は、その心境にも変化があり、麗たちと協力して、父を含む東京都の汚職に関して告発に協力していくようになります。
百美役を演じるのは、『リバース・エッジ』、『オオカミ少女と黒王子』などで主人公を務めた二階堂ふみさん。ふみさんが演じている点や、名前が女性のようなので、勘違いしやすいところですが、百美自体は男性という設定のキャラクターです。
ちなみに、二階堂ふみさん自身は実際は沖縄出身です。
麻実 麗/GACKT
白鵬堂学院3年A組に転入してきたアメリカ帰りの帰国子女が、麻実麗(あさみれい)です。容姿端麗で、白鵬堂学院の生徒たちも驚くほどの都会的センスを有しており、丸の内にある大手証券会社の御曹司であることからも、特別待遇を受けていました。
しかし、その正体は埼玉県の大地主の西園寺家の子息であり、都知事となり埼玉県の通行手形制度撤廃を目論んでいるという人物。潜入している際も、差別を受ける埼玉県人を度々気遣い、その優しさを見せてくれます。
麗役を演じるのは、役者だけでなくミュージシャンや実業家としても活躍するGACKTさん。作中でこそ埼玉県民を率いる存在として描かれているGACKTさんですが、ご本人の出身は実際は沖縄出身です。
阿久津 翔 /伊勢谷友介
百美の父親・建造の執事であり、母親・恵子に従事している人物が阿久津翔(あくつしょう)です。
普段は東京で活動をしているのですが、その正体はエンペラー千葉の息子である千葉県民であり、千葉解放戦線のリーダーを務める存在。阿久津の目的は、千葉県の通行手形制度を撤廃することであり、同じく撤廃を求める埼玉とは対立関係にあります。
当初は麗とも対立していましたが、最後には和解し、共に通行手形制度撤廃を進める仲となりました。
翔は原作には登場しない映画のオリジナルキャラクターです。
そして、そんな翔役を務めたのは、『花燃ゆ』や『るろうに剣心』などに出演している伊勢谷友介さん。ご本人は実際は東京都出身の方です。
埼玉デューク/ 京本政樹
埼玉県人ではありながら、東京を歩いていても誰からも疑われない存在として語られる存在が埼玉デュークです。かつて、東京で虐げられる埼玉県人たちと共にクーデターを起こしたものの、エンペラー千葉によって食い止められてしまい、それ以来行方不明となっていた伝説の存在でした。
しかし、彼は存命しており、阿久津翔によって捕らえられた百美と麗の救出に現れ、共に戦う存在となってくれました。
埼玉デューク役を演じたのは、ちょうど本作の公開年に芸能生活40周年を迎えた京本政樹さん。ご本人の出身は、埼玉ではなく実際は大阪府です。
壇ノ浦 建造/中尾彬
百美の父親であり、現在東京都知事を務めている存在が壇ノ浦建造(だんのうら けんぞう)です。東京を統べるその裏では、通行手形を発行することで不正金を着服し、手に入れたお金を金塊に代えて群馬に隠し持っていました。
千葉や神奈川とも裏で手を引いており、関東圏を支配している存在です。
壇ノ浦建造役を務めるのは、タレントとしても活躍するベテラン俳優の中尾彬さん。作中でこそ東京を代表する存在として描かれていますが、ご本人は千葉県出身です。
菅原 愛美/島崎遥香
現実世界で、百美や麗の物語をラジオで聞いている菅原家の娘が菅原愛海です。
五十嵐春翔(成田凌)との結婚を控え、結納に向かっている途中で、東京暮らしに憧れていたのですが、春翔もラジオを聞いており物語に感化され、春日部に家を建てることになり、落ち込んでしまうという結末を迎えました。
後日談として、世界埼玉化計画を発表する場にも、愛海たち家族の姿を確認することができます。
愛海役を演じるのは、AKB48出身の島崎遥香さん。2016年いっぱいでグループを卒業し、本作やドラマ『ひよっこ』などで役者としても活躍しています。作中のキャラクターと実際の出身地が違うことが多い作品ですが、ご本人も埼玉出身です。
映画『翔んで埼玉』に登場する埼玉の秘密
作中にはあまりにも誇張された表現で関東圏の姿が描かれますが、随所に実際の埼玉の姿も描かれます。作中では詳しく説明されていないそんな埼玉発祥のあれこれも改めておさらいしていきましょう。
埼玉と千葉の有名人バトル
映画『翔んで埼玉』の中でもCMなどでも起用された印象的なシーンといえば、埼玉と千葉の有名人対決です。それぞれの地域の出身者で有名な人物を見せつけ合うというコミカルなシーンでした。
埼玉県側が繰り出した有名人は、まずはTHE ALFEEのメンバーである高見沢俊彦さん。THE ALFEEは作中でも言及されている通り、日本グループ史上最多のコンサート数を記録しています。
続いて繰り出したのは反町隆史さんと竹野内豊さんのお二人。お二人がダブル主演を務めたドラマ『ビーチボーイズ』が1997年にヒットしており、その内容から「海なし県のくせに生意気な」というセリフが阿久津の口から漏れたわけですね。
ちなみに、千葉側が繰り出してきたのは、ミュージシャンのYOSHIKIさん、続いて女優の桐谷美玲さんと真木よう子さん。「弱い」とかわいそうな扱いの小倉優子さんや小島よしおさん、そして『家政婦は見た!』シリーズの主演・市原悦子さん。いずれも千葉県出身の有名人です。
日本全国に広がる埼玉発祥物
作中最後に、日本埼玉化計画が描かれるシーンでは、散々作中で虐げられてきた裏で、埼玉発祥の企業や商品が全国的に普及していることが紹介されます。
まずは埼玉県に本社を持つ株式会社安楽亭。焼肉レストラン安楽亭をはじめ、焼肉を中心としたレストランの経営を広げています。続いて、全国に広がっている衣料販売店ファッションセンター・しまむら。こちらも埼玉に本社を持っている株式会社しまむらの経営する店舗です。続いて映る進学塾の栄光ゼミナールは、現在運営している株式会社栄光が東京都に本社を置いていますが、当初は1980年に埼玉県浦和市にて創業されたのが始まりです。
続いて映るアイス「ガリガリくん」は埼玉県に本社を持つ赤城乳業株式会社の商品。そして作中でも詳細に描かれるコンビニエンスストア・ファミリーマートも、1973年に埼玉県挟山市に一号店が開店しました。作中に登場する写真は実際のお店の写真です。
意外な埼玉発祥のものを知ることができたと思いますが、唯一実は埼玉ではないものも登場しています。それが映像に登場するショッピングモール・Unimo。実は実際は千葉県に存在するショッピングモールで、映画では上空から眺めると“さ”の文字が浮かび上がるようにできていましたが、あれも加工した映像で、実際の建物は作中のような構造はしていません。
まとめ
これほどまでに日本のローカルなネタをエンターテイメントに昇華した映画があっただろうかと、改めて思わされるほど『翔んで埼玉』は異様なストーリーの映画でした。
ですがそんな中にも、地元を愛する姿の美しさや、地域差別の残酷さをポップに描いていたりと、作品の有意味さを感じます。実は深い……いや、そんなこともないかも?という絶妙な按配の『翔んで埼玉』は、やはり秀作映画だったと言えるでしょう!